老後の趣味 樋口恵子さんは体験から「ひとつは体育会系」と説く

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安上がりの歩き

   豊かな老後のためには、屋内外で一つずつ趣味を持つことだという。邸内では読書、楽器やカラオケ、絵画、音楽・映画鑑賞、麻雀、手芸、料理など、戸外なら釣り、ゴルフ、テニス、ドライブ、スキー、山歩き、旅行、家庭菜園などが浮かぶ。ただ樋口さんが書く通り、とりわけアウトドア系では 加齢で「引退」を迫られる趣味も多い。

   樋口さんの提案は、「いつまでも動ける身体」のために、体育会系の趣味で老化を遅らせましょうというものだ。

   なんの制限もなく日常生活を送れる期間を「健康寿命」という。日本人の平均(2019年)は男性が72.7歳、女性が75.4歳。その先にある平均寿命までの10年ほどは、杖の常用から認知症、寝たきりまで、様々な形で「不健康」な期間となる。

   こうした数値をもとに考えれば、60代から意識して「体育会系」に勤しむ必要がある。私も、趣味というより肥満解消の必要に駆られ、50代からウォーキングに励んでいる。平凡なエクササイズだが、例えば風景や草花の写真を撮りながら歩けば、立派な趣味といえよう。しかも、1~2年で履き潰すシューズを除けば金もかからない。

   収入も支出も限られる年金生活。生活費を削ってのジム通いなど、新たなストレス要因だろう。心が「ヨタヘロ」になったのでは本末転倒だ。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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