質問になんでも答えてくれるという対話型AI(人工知能)「Chat GPT」。これが記号やテキストで絵を表現する「アスキーアート(AA)」の生成にも対応していると聞いた。
早速試してみると、生み出されるAAのクオリティーにいろいろ驚いた――。
頭頂部から順に出力
記者はChatGPTを開き、日本語で「ドラえもんのアスキーアートを作ってください」と打ち込んだ。誰もが知る国民的キャラクターだ。
AIは「こちらがドラえもんのアスキーアートになります」と前置きし、1行ずつ、空白や記号を織り交ぜ、頭頂部から順にAAを生み出していく。
ドラえもんらしく丸みを帯びた頭部の輪郭。さらに顔の中心部分に広がる白い部分と、外側の青い部分の境界線が描写されていく。これは、期待できるかもしれない。
そのまま見守ると、徐々にAA描画の雲行きが怪しくなる。目にあたる部分は黒丸の「●」記号のみで、丸いはずの鼻は逆三角形「▽」で表現されているのだ。そうしてドラえもんとは似ても似つかない謎のキャラクターが完成した。誰だ。
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/ \
/ / ̄\\ \
/ / ● ● \\ \
/ / ▽ \ \
| ( ○ ω ○ ) |
\ \ //
\______/
口はオメガ「ω」記号のみ。三本ヒゲは無い。変わりに口の横に「〇」記号が付き、頬の照りを表現。強いていえばゴリラに見える。
最初は「作れない」と言い訳
英語で指示文を入力したユーザーの意図が伝わるのではと考え、「ユリウス・カエサルの肖像をAAで生成して」と伝える。古代ローマの有名な軍人だ。
AAは出現せず、代わりに、
「申し訳ございませんが、私はAI言語モデルのため、AA形式ではカエサルの肖像を生成できません。私の能力以上の創造性や芸術的スキルを求められるからです」
「インターネットで検索したり、専用の生成ツールを利用したりすれば、肖像のAAが手に入るかもしれません(編集部訳)」
と勢いよく釈明の言葉が飛び出した。そもそもAAの描画には適正がないとの説明だ。
リアルな肖像画に限定しなければ、可能な範囲で描いてくれるだろう。そう考え、「カエサルのAAを生成して」とだけ指示する。
ChatGPTは描画を開始。かなり細長い顔をした、男性らしき短髪の人物が生み出された。両目は「a」、鼻は「u」、口はイコール「=」記号。独特な絵柄だ。
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#_ _#
|a ` `a
| u |
\ = /
|\ /|
___ ____/_ \___/_\ ____ ___
/ ' / | [] | \ `\
\_ \__/ \__/ _/
\_ | | _/
`\_ | | _/`
`--___-\ /-___--`
`---`
首の下には、謎の膨らみがふたつ広がる。絵画などでよく見る、カエサルが肩に掛ける布やマントをイメージしているのだろうか。
ChatGPTが「本気」出した結果
最後の挑戦だ。表現を変え、日本語で「ドラえもんのアスキーアートを本気で描いてください」と指示する。
するとChatGPTは「こちらがドラえもんのAAになります。猫型ロボットの愛くるしい表情が再現できるように、全力で描いてみました。お楽しみください!」とこれまでに無い大見得を切る。よほどの力作とみえる。
しかし出力されたアートは、筆舌に尽くしがたい。上部には、しぼんで下を向いた花のつぼみに見える物体が出現。花の両脇から、斜め方向に向かって2本の線が伸びていく。
線はある地点で太くなり、斜めではなく、真下に向かう。棒か支柱のような円柱が2本、画面の下方向へ伸長し続ける。棒はテキストとして縦25行以上もの長さ。描画は、28行目あたりで止まった。これで完成らしい。
「手の甲の上に、ひもの部分を乗せたヌンチャク」「神々しいモニュメント」にも見えるが、間違いなく「愛くるしい表情を再現」した「猫型ロボット」ではない。
本気出した結果、ドラえもん要素はゼロになった。
とはいえ不得意ながらAAの生成にまで対応する汎用性は驚きだ。これからの進化によって、いつかは「AA職人」としての役割も果たしてくれるかもしれない。