【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招いて、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?
第17回のゲストは、VR映像作家・ゆはらかずきさん。テーマは「ポプテピピック2期OP「今明かされるトリビア」VR映像作家が語る制作秘話」だ。スペースアーカイブはこちらから。
情報量が多すぎて気づけない
アニメ「ポプテピピック」第二期オープニングアニメーションは、「360度楽しめる」のが特徴だ。キャラクターのポプ子とピピ美が、「少し歩いては増殖」を繰り返し、やがて世界は回転し始める――。無数のポプ子とピピ美が、それぞれに異なる動きを見せ、まさしく「カオス」な様相。
何度見ても、追いきれないほどの情報量が詰め込まれている。そこに、制作者のゆはらさんは、「オープニングは毎回同じものが流れるから、どこかが変わっていたら面白くなる」と考え、遊び心を仕込んでいた。気づいた人がいないか、ツイッターで探したものの、「誰もいなさそう」とゆはらさん。今明かされるトリビアの正体とは。
ゆはらさん「ポプテピピックのキャラクターで一番かわいいと思っている『うにゅ丸』を、必ずどこかに入れています。毎回、隠れている場所が違います」 山下さん「えーっ!毎回見ていましたけど、気づかなかった。あー、くやしい!(笑)」
なお、うにゅ丸が本編に登場する回のオープニングのみ、「大きめに入れた」そう。その時だけは、山下さんも「うにゅ丸がいる!」とわかったようだ。さらに詳細な話はスペースにて。
再生中にも自由に視点変えられる「360度VRMV」
同オープニングアニメーションは、ゆはらさんがVRペイントツール「Quill(クウィル)」で書き出したデータを、Adobe Photoshopでなぞって作り上げたもの。ヘッドマウントディスプレイをかぶり、空間上に絵を描いてアニメーションにできるという。
大学4年生の修了制作を通じ、VRアニメーションの魅力を体感した、ゆはらさん。その後、ミュージシャン・トクマルシューゴさんの楽曲「Canaria」のMVを360度手描きアニメーションで作り、第24回文化庁メディア芸術祭にエンターテインメント部門新人賞を受賞した。同作をYouTubeで見ると、動画左上にボタンがあり、再生中に視点を自由に変えられる。いつでも、どこからでも眺めていい作品なのだ。
ゆはらさん「だからこそ、視線誘導が大事です。後ろを向いていたら、主人公が死んでいた......なんてことにならないために、見てほしいところを見てもらう工夫が必要ですね」 山下さん「確かに、『どこを見ればいいかわからん!』ってなりますもんね。工夫について、具体的に言うと?」 ゆはらさん「例えば、音です。音が後ろで鳴ったから、振り向いたらドアが開いている、とか。あとはライティングやエフェクトも駆使しています」
VR空間で視聴すれば、自分の立ち位置によって、音が聞こえてくる方角も変わる。
ゆはらさんは「VRアニメーションの魅力は色々あるが、一番は『自分が描いた世界に入れる』こと」と語る。現実では造りえない建物さえ、ローコストで生み出し、中に入れる。場所の制約もない。クリエイターが表現したいものをそのまま、形にできるのだ。
スペース終了後、ゆはらさんと山下さんに、内容を振り返ってもらった。二人が共通して出したキーワードが「音MAD」。ニコニコ動画が中心になって発展したジャンルで、ゆはらさんも山下さんも、かつてさまざまな投稿作品に触れ、刺激を受けていたという。スペース中、山下さんが音MADの話題を取り上げたことから、
「自分が意識していなかった音MADからの流れにも気づかされました」
と、ゆはらさん。「ポプテピピック」第二期オープニングアニメーションに、音MADを思わせる要素がちりばめられていたと、改めて自覚したそうだ。山下さんとのトークによって制作の振り返りができたと同時に、「新しい技術やチャレンジに取り組みたいという想いが強まりました」と話した。
第18回作リエは、2023年3月29日実施予定。