変われぬメディア 武田砂鉄さんは女性飛行士への質問に呆れる

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お客のレベル

   「ニュース カタリスト」は、同誌の巻頭に置かれるニュースコラム。毎週3人の筆者が違うテーマで世相を切り取る。武田さんのほか、同年代の山口真由さん(元財務官僚)、石戸諭さん(ノンフィクションライター)が執筆している。

   今号の武田コラムに添えられたタイトルは...〈新宇宙飛行士のお披露目で 旧態依然として変われないメディアの姿を再確認する〉

   個別のインタビューほどではないにせよ、記者会見という公の場は、答える側の覚悟や器量のみならず、問う側の予備知識や力量も問われる。私の記者時代も、聞いて新情報を引き出すのが自分の仕事と思い詰め、どんな会見も真剣勝負の場と心得ていた。勉強不足で恥をかいたことも多々ある。

   武田さんが指摘する、くだらない質問は珍しいことではない。それは限りある会見時間の浪費であり、他の質問者の迷惑ともなる。

   過去最多4127人から選ばれた宇宙飛行士の候補者。米主導の有人月探査「アルテミス計画」により、初めて月面に降り立つ日本人になるかもしれない男女である。まずは性別を超えて、心構えや抱負を問うべきだ。生い立ちやキャリアを尋ねる過程で、自ずと私生活に触れる展開は「あり」だとしても、いきなり「お子さんは?」はあり得ない。取材手法としても稚拙だと思う。

   武田さんは、とりわけ若い女性への対応を問題視する。それなりの覚悟や準備がある芸能人ならまだしも、たとえば著名になる前の一般人に「好きな男性のタイプ」を聞く必要はない。さすがにスリーサイズを聞く馬鹿は昔話になったが...。

   会見での質問は、そのメディアの客(読者や視聴者)を意識しており、質問者が描く客先の関心を反映した内容となる。質問のレベルは、彼や彼女が考える「お客のレベル」なのだ。だから武田さんのように、真面目に怒ったほうがいい。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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