栃木県佐野市の名物「佐野らーめん」を学び、佐野市で生計を立ててもらおう。「佐野らーめん予備校」は、市が支援するユニークな取り組みだ。
プロジェクトは2019年から始まり、店を開業した人もすでにいる。現在、12期生の募集中だ。
41人の応募が
「佐野らーめん予備校」は、市内への移住と佐野らーめん店の開業や事業継承をセットで支援するプロジェクト。「基礎研修」、「本格修業」、「開業サポート」の3段階にわけて手厚くサポートする。
基礎研修では、佐野らーめんの作り方や飲食店に必要な資格についての講習、さらには税金関係の申請、経営やマーケティングなど、経営に必要な知識を幅広く基礎研修として学ぶ。その後、事業継承や独立開業などに向けて既存店で修業するか、飲食店経験者であれば早い段階で開業を目指すことも可能だ。
ラーメン店の開業を目指す人にとっては魅力的なプランだが、「移住」が条件に組み込まれている。定期開催するほど人が集まるのだろうか。J-CSATトレンドは、佐野市役所総合政策部の移住・定住係担当者に取材した。担当者によると、1期生から11期生まで、41人の応募があり17人が卒業したという。
やはり条件として「移住」は重く見られる場合もあるが、と前置きをした上で、「移住を考えたとき、移住先での仕事というのが最大の課題になっています」と話す。
街に対していい印象を持っても、仕事が見つけにくいと移住まで結びつかないという。佐野らーめんは市内最大の地域資源だ。移住と佐野らーめん店の開業までサポートするこの取り組みから、実際に4店舗が開業し、「卒業後に移住して、どの店も順調に運営をされていますので、成果は出ているのではないのかなと考えています」と、話した。
「商売敵」ではなく、「商売仲間」
1期生は2020年8月に募集。11人が応募し、選考などを経て参加に至ったのは、3人。現在は基礎研修を終えて、市内の佐野らーめんの店で本格修業中の人もいる。前述の開業した4店舗には、飲食店未経験者の人もいるそうだ。
最大の地域資源というだけあり、市内には150店舗が店を構え、その中には人気店や老舗店もある。営業は難しいのではないかとも思われるが、担当者は「開業後1周年を迎え、人気店に成長しつつある店もあります」と話す。また、伝統的な製麺技法「青竹手打ち」を使って「長く店を続けたい」という気持ちから、一日に提供する食数を制限するなどして、自分の希望のライフスタイルに合わせた営業をする人もいるという。
「佐野らーめん予備校」には、既存のラーメン店の協力も欠かせない。商売敵が増える、売上が落ちるのではないか、と当初は危惧する人もいたという。しかし、予備校の授業には既存店も協力しているといい、
「メディアへの取材が多くなるにつれ、予備校が盛り上がることで佐野らーめんの活性化につながると考えてくださる方も増えています」
と、「商売敵」ではなく、「商売仲間」が増えると考え方を変える人も増えてきたという。