文体はかなり異なるが
大江さんの作品は、1950年代後半から70年代の、若い人たちに圧倒的な影響力を持った。この時代に、青春を送った世代の多くは、大江さんの本を一度は手に取ったといわれる。
武道家でフランス文学者の内田樹さん(72)は、「大江健三郎さんが亡くなりました。もう久しく新作を手に取ることはなかったのですが、高校生の頃は大好きな作家でした。『セブンティーン』『個人的な体験』『日常生活の冒険』に衝撃を受けました」とツイートしている。
近年、大江さんに替わるかのように若い人たちに大きな影響力を持っている作家が村上春樹さんだ。村上さんもまた、作品のタイトルが奇妙で謎めいていることで知られる。
『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』『1Q84』『騎士団長殺し』などだ。
難解な言い回しが多い大江さんと、平易だが心にしみてくる表現が特徴の村上さん。二人の文体はかなり異なるが、村上さんの作品も大江さんの諸作品と同じように、タイトルからすぐに内容を推測することが難しい。