センバツ高校野球で、マネジャーの女子部員がノックを打つ姿が初めて実現する見通しだ。2023年3月1日、運営委員会が従来の規則を緩めて認めた。これまでは男子部員に限られていただけに大きな変化だ。
部員13人
朝日新聞によると、1日のセンバツ運営委員会で、女子部員に関する規制が大幅に緩められ、試合前のシートノックを女子部員が務めることが可能となった。普段の練習から活動している部員に限るという。
甲子園の本番では、女子マネには制約が多い。過去には女子マネが甲子園練習時にボールの渡し役として参加しただけで、規定違反とされたことがあっただけに、大幅な規制緩和だ。
18日から始まるセンバツで、実際に女子部員がノックを打つことになるとみられているのは、徳島県立城東高校だ。部員は女子マネジャーの永野悠菜さん(2年)を含めて13人しかいない。練習でも、ノックは永野さんがやってきた。日刊スポーツによると、永野さんは野球未経験だったが、猛練習でノックを打てるようにまでなったという。
今回、城東は「困難な状況を克服した学校」などが対象となる「21世紀枠」での出場だ。四国大会出場をかけた昨秋の県大会の3位決定戦では、古豪の徳島商に4―5で惜敗したが、5盗塁を絡めて最後まで食い下がったことなどが評価されたようだ。
城東は徳島市の中心街にあり、運動場が狭い。野球部が使えるのは「内野」ぐらいのスペースしかない。
そのため、朝日新聞によると、選手たちは主に犠打や盗塁の練習を重ねてきた。足を生かした「機動力野球」が持ち味だ。
「寂聴文庫」や「寂聴奨学金」
城東高校は徳島県内屈指の進学校だ。1 学年270人ほどだが、東大、京大、阪大に20人前後が合格する。医学部志望者も少なくない。実際、部員の半数は塾通いをしている。
創立は1902年。戦前は徳島高等女学校。戦後、共学になったが、伝統的に女子学生のほうが多い。現在も在校生の半数強が女子だ。
有名な卒業生が瀬戸内寂聴さん。「創立100年」の時は母校で講演した。同校ウェブサイトによると、図書室には「寂聴文庫」というコーナーがある。全集はじめ、代表作である『源氏物語』現代語訳や"ぱーぷる"の名で出されたケータイ小説、法話集など260冊の書籍を所蔵している。
また、「瀬戸内寂聴 奨学金」でも後輩を支援してきた。同校サイトによると、「この奨学金は,徳島県立徳島高等女学校第36回卒業の瀬戸内寂聴氏より寄託いただいた浄財を基金としています。有為な人材の育成を図るため,経済上の理由によって学業の継続が困難な事情にある生徒に,本校在学中支給するものです。この奨学金は,返済の義務はありません」とのことだ。
いわば「寂聴愛」に包まれているのが城東高校だ。「旧・名門女子校」がセンバツ出場するだけでなく、甲子園で女子マネがノックを打つとなれば、フェミニズムに縁が深い泉下の寂聴さんもびっくりするにちがいない。
徳島県勢のセンバツ出場では、1974年の池田高校が有名だ。部員11人で準優勝。「さわやかイレブン」として歴史に刻まれている。「13人」の城東も、「女子マネ」で新たな歴史を刻むことが確実だ。