VR(仮想現実)を通して恋人探し――。VR恋愛マッチングサービス「Memoria」は、2023年3月1日に、VRゴーグル「Oculus Quest」向けアプリを配信した。4月12日にはパソコン(デスクトップ)版やウェブサイトでも正式リリースを開始する予定だ。
運営するFlamers(東京都世田谷区)代表のKouchさんに、VRのデートスポット内で取材した。
仲良くなってもらう「仕掛け」
利用登録にあたり、まずはMemoriaの専用フォームからプロフィールを入力。希望する呼称、趣味・マイブーム、相手に希望する条件、といった項目を埋めていく。
入力情報をもとに運営がマッチング相手を探し、見つかり次第ユーザーに連絡。マッチングが成立したら、Questやパソコン向けに用意されているMemoriaにログインIDを使って入室する。男性型や女性型のアバター数種類から好みのものを選び、マッチング相手と会う。
記者のマッチング相手はKouchさん。顔合わせ会場で、まず互いの音声が聞こえているかを確認し、スタートボタンを押して交流を開始する。制限時間は30分だ。
顔合わせ部屋の各所には、マスコットキャラクターのドラゴン「めもどら」を配置。初対面の相手となれば会話時に緊張しがちだが、そうしたときに場を盛り上げ「和ませてくれる存在」として、めもどらを用意したとのことだ。
めもどらの吹き出しには「自分のことをなんて呼んでほしいか話してみよう!」「今日はどんな一日だった?仕事?家でゆっくり?」といったメッセージが書かれている。室内を歩きながら質問に答えることで、ユーザー同士に仲良くなってもらうのがねらいだ。
相手を内面から知ることができる
部屋の2階には互いのプロフィールカードを掲示。共通の趣味を探しながら話ができる。制限時間30分を過ぎればユーザーは部屋から退出し、運営は利用者に対してアンケートを実施する。相手とさらに話したいと双方が希望すれば、コミュニケーションアプリ「Discord」のアカウントを互いに教えあい、自由に連絡が取れるようになる。
顔合わせ以降もMemoria上で交流をしたい人に向けては、デート用のワールドを用意している。「ランタンの照らす庭」は欧州の街中にある広場のようなワールドだ。屋台を運営したりお酒に酔っていたりと、さまざまな挙動をするめもどらが配置されているほか、会話のきっかけになる心理テストを設置している。
もうひとつのワールドは「めもどら電車旅」。きのこの家や、建物よりも高い花が生えたメルヘン調の世界を走る列車の中でデートをする。Kouchさんによると、「同じ景色を一緒に見ながら話すと、自己開示(ありのままの自分を出すこと)がしやすい」。こうした考えから、車窓の風景をユーザー同士が眺めながら話せるように作ったワールドだ。
VRを通しての恋愛マッチングにはまず「相手を内面から知ることができる」メリットがあるとKouchさん。アバターで会話するMemoriaは、見た目以外の要素で相性の良い相手を見つけられる。「普通の『良い方』が、普通に恋愛できる場所になったらいい」と語る。
ゆるい雰囲気で相手と話せるほか、「いきなり出会う前にまずはメタバースを通して互いを知れる安全性」「化粧やおしゃれをせずともすぐに顔合わせができる気軽さ」といった利点があるとのことだ。
Memoriaをサービス開始する前にも、Kouchさんはメタバース上で「VRCお見合い会」というお見合いイベントを10回実施した。ユーザーからの報告で把握している限り、これまでのイベントやMemoriaを通して、実際に現実でも出会ってカップルになった事例は20組弱あるという。2組は婚約まで至ったとのことだ。
「一般的なマッチングアプリや街コンが苦手だと感じている人に向いているサービスだと思います」(Kouchさん)