「笑点」の重さ 春風亭一之輔さんが企てた締め切り延長作戦

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面倒だが楽しい

   週刊朝日は、サンデー毎日と並ぶ日本最古の週刊誌である。先ごろ、今年5月末での休刊を発表した。1922(大正11)年に創刊、昨年100周年を祝ったばかりで、出版業界ではそれなりの出来事だ。作中にもあるように、一之輔さんには担当編集者が「上司からお話が...」と電話してきた。他の連載陣にも同様の連絡があったはずだ。

   一之輔さんの連載には「演題」がつき、今回は〈発表〉だった。同じ発表でも、掲載誌の休刊と違い、大喜利のレギュラー入りは慶事である。ご本人は「決して『おめでたい』ことではない」と謙遜するが、レギュラーメンバーは6人のみ。噺家にも得手不得手があり、全員が当意即妙に対応できるわけではない。番組側は、一之輔さんなら一般視聴者にも必ず受ける と評価したのだろう。応諾の先には「茨の道」が延びている。

   本作は、笑点レギュラー入りの覚悟と連載の締め切りを巧みに絡め、筆者と編集部の攻防を面白おかしく再現した。一般的に、重い話を軽く書くのは難しい。その点「面倒くさいが楽しいかんじ」という表現は、簡潔にして秀逸である。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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