チャット型AI(人工知能)「ChatGPT」は、さまざまなジャンルの質問に、自然な文章で回答をしてくれると話題だ。これが、大学生のリポート・論文執筆や小中学生の読書感想文といった宿題をこなすのに利用されるのではないかと懸念する向きがある。
海外の教育機関では既に学生、生徒によるChatGPTの使用を禁止する事例が報道されている。
リポート「秒で終わらせてみた」
ツイッター上ではChatGPTについて、「これが有れば読書感想文なんて読まずに書ける」「学校の宿題とか一瞬で片付けてくれそう」といった意見を一定数見かける。
ショート動画投稿プラットフォーム「TikTok」では、「期末リポートChatGPTが5分でやってくれた」「ChatGPTを使って大学のリポートを秒で終わらせてみた」として、国際政治学や社会学に関する質問をChatGPTに投げかける動画が2つ見つかる。前者の動画は実際に教員に提出しているのかは不明だが、AIの回答をコピーし、リポートの体裁で文書作成ソフトに貼り付ける様子が映っていた。
1月27日付の英ロイター(日本語版)記事によると、フランスの名門大学・パリ政治学院では学生と教員に対し、特定の目的を除いて使用を明確にせずに論文やプレゼンテーションの作成にChatGPTを利用する行為を禁止する方針を通知したという。不正行為や盗作を防ぐためだ。いかにChatGPTの使用を追跡するかは、明確にしていないとのこと。
2月14日付テレ朝newsの記事によると、オーストラリアではクイーンズランド州など5州の学校で、校内でのChatGPTの利用が禁止されている。
日本ではどうなると考えられるか。立命館大学の上原哲太郎教授(情報理工学部)に取材した。
話によると、大学のリポートや学校の課題は教育をねらいとして実施しているものであり、学生・生徒側がAIに回答を任せてしまっては教育効果を果たしたことにはならない。そのため、日本でも同様のケースでのAI利用は不適切行為とみなされると話した。
一般的な剽窃と同じ対策を
大学のリポートを例にとると、今までもインターネット上の文献から文章を丸写しするような行為は剽窃(ひょうせつ)として禁止されてきた。AIを悪用してのリポート執筆への対応は、こうした剽窃行為への対策と同じようなものになるのではないかと上原教授。
具体的には、ChatGPTをはじめ広く利用されているAIツールに、学生に課しているテーマと同じ質問を投げかける。そうしてAIに複数の回答パターンを出力させ、内容を保存しておく。そして学生が提出したリポートにAI回答と似たものがないか、照らし合わせてチェックするのだ。
あるいは多数の学生がChatGPTを使ってリポートを書けば、学生間で内容の重複が生まれ得る。こうした内容の重なりを注視するといった対応が考えられると、上原教授は説明した。