デジコレのおかげで古い用例が続々
まずは「ギョエテとは~」の表記でそのまま検索してみる。しかしこの表記だと、緑雨の死後50年以上後、1960年代までしかさかのぼることができない。
そこで、「ギョエテ ゲーテ」「ゲーテ言ひ」などいくつか検索ワードを変えながら試してみる。すると「ギョエテとは~」ではなく、「ギヨーテ(ギョーテ)とは~」などの形のほうが、より古い用例が見つかることに気づいた。
この表記だと一気に過去の用例が増え、1930年代の出版物がいくつか出てくる。確認できるもので最も古いのは、1932年のものだ。
デジコレより。1932年ごろを境に用例が増える。なお、デジコレの資料は「ログインせずに閲覧可」「ログインするなどすれば閲覧可」「国会図書館内のみ閲覧可」の3種類があるが、今回のような古い資料だと、ログインさえすればかなりが外部でも閲覧できる。
「『東京朝日新聞』昭和五年三月十八日神代種亮氏の説に依れば、Goethe[ɡøːtə]の音訳が二十九種あるさうである。斎藤緑雨の川柳に、『ギョーテとはおれのことかとゲーテいひ。』といふのがあるさうである」(荒川惣兵衛『外来語学序説 : モダン語研究』、1932年)
さらに、初期の用例では上のように(1)ゲーテには29種類の日本語表記がある(2)斎藤緑雨に「ギヨーテとは~」という川柳があるらしい、という話がセットになっていることが多い。
1930年代前半の用例のうち、今回確認できたものをまとめた。細かい違いはあるが、内容には共通点が多い。このほか32年10月の文芸春秋 10(11)でも言及があるが(本文未確認)、大筋で内容は共通している模様だ。
とすると、(1)と(2)を同時に含む文章がどこかにあり、これら初期の用例はそれを参照、あるいは孫引きしているのではないか。そんな推測が成り立つ。