飲食店での迷惑行為を動画に収め、それをSNS上に載せた末に拡散されるトラブルが相次いでいる。大手すしチェーン「スシロー」での迷惑行為をはじめ、「はま寿司」、「くら寿司」も同様の事態が起き、大手カラオケチェーン「カラオケまねきねこ」でも発覚した。厳正な対応を決めた会社も出てきた。
客による店内での撮影風景は、当たり前のように見られる。実は飲食店や娯楽施設の中には、撮影自体の事前申告を求めたり、そもそもライブ配信を禁止しているところがある。
一蘭「生配信は禁止」
動画撮影や配信に対するルールを、企業公式サイトで公開している企業3社に取材を申し込んだ。
ラーメン専門チェーン店「一蘭」は、「店内での動画撮影に関するお願い(YouTubeなど)」というタイトルで、店内での撮影、その公開についてのルールを細かく定めている。撮影前に従業員へ申し出た上で、別途、撮影許可申請フォームの入力が必要だ。公開前には、一蘭による内容確認を求めている。また、ライブや生配信については「どのような内容であっても撮影禁止」としている。
一蘭は取材に対し、「2021年8月から導入いたしました」と話す。2013年ごろに社会問題になった「バイトテロ」や、近年物議をかもした迷惑系YouTuberが関係あるか質問すると、「影響はございません」と回答した。
「店舗スタッフの負担軽減のため」
一蘭によると、ルールを決めた理由は主に3つある。
1つ目は、「他のお客様のお食事環境を守るため」だ。「一蘭では『味集中カウンター』でお客様にラーメンの味に集中していただきたいとの思いがございます。そのコンセプトをご存じない方が、地声の声量で食レポや会話などをすることにより他のお客様のお食事環境を阻害してしまう懸念から、注意事項を明確にお伝えしたうえで、ご撮影いただきたいとのことから、導入いたしました」と回答した。
2つ目は「店舗スタッフの負担軽減のため」。担当者は「近年、店頭でアルバイトスタッフに『動画撮影していいですか』という質問をいただく機会が増え、スタッフでは判断できないことや、注意事項をすべてお伝えすることが難しいという状況が多くございました」と、背景を説明した。
3つ目は「公開前の事前確認の円滑化」。担当者によると、「動画を公開する前に、弊社にて内容を確認させていただくようお願いしております」。そして、
「目的としては、他のお客様の映り込み、従業員の名札、視聴者に不快感を与える内容の有無を確認するためです。基本的に動画の内容について弊社から指示することはございません。しかしながら、ガイドラインに抵触するシーンが確認できた場合のみ、該当部分の編集をご相談をさせていただくこともございます」
と続けた。
なお、「撮影許可申請フォームの導入により、注意事項も事前に把握していただいているため編集相談が必要な動画は、以前より減少いたしました。なお、生配信は事前確認ができないため、どのような場合でも一切禁止とさせていただいております」と答えた。
勝手な生配信「お客様から一部指摘」
匿名を条件に回答した別の企業は、撮影やSNS投稿ルールを2021年11月から公式サイトに掲載している。「一般のお客様から店頭や本社へメール、お電話等で撮影に関する問い合わせがかなり増えたこと、お客様から一部指摘もありましたので(勝手に生配信をしている等)業務の効率化やSNSの普及や拡散効果などを鑑み、HPへ掲載することになりました」と経緯を説明した。
バイトテロや迷惑系YouTuberは「関係していません」。一方、「著名な方でも、弊社の許可無く動画投稿された方もいらっしゃったことはございます」と答えた。
ほかに取材を申し込んだ中で、「磯丸水産」などを展開する「SFPホールディングス」は、回答を差し控えた。