メタバース(仮想空間)について有識者が話し合うイベント「Metaverse Japan Summit 2023」が2月2日に開催された。テーマは「地方創生×メタバース」だ。
メタバースプラットフォーム運営企業や、仮想空間を産業に取り入れようと考える省庁、メタバースを地方創生に活用している自治体の関係者が多数参加。「メタバースが変える新時代の医療」「メタバースによるサスティナブルな社会創造」など、多様なテーマで議論が行なわれた。
イベントないと人が来ない
「メタバースが加速する日本の観光」をテーマとしたセッションでは、地域の魅力をいかにメタバースで伝え、現実の街と連携するかが話し合われた。
議題のひとつは、「東京・大阪という都市からみた(メタバースの)可能性や課題は?」だ。
大阪府では、地域の魅力を発信するため、大阪の名所を楽しめる「バーチャル大阪」というメタバースを公開。VTuberが出演するライブイベントなどを実施している。
大阪市万博推進局出展企画課担当係長の林真史氏は、バーチャル大阪について「素朴に感じている」課題を語る。「イベントを行うとバーチャル大阪に人は来る」ものの、そうでない場合はあまりユーザーが訪れない傾向があると指摘。多くのユーザーがバーチャル大阪を体験し、最終的に現実の大阪に訪れる仕組みが必要と話した。
東京の渋谷区観光協会の代表理事・金山淳吾氏は、コミュニケーションのツールにならなければメタバースは「常時人がいる場所」になりづらいと意見。SNS「Facebook」や「Twitter」でも、常時イベントが開かれているわけではない。しかしフォロワーやチャット機能が存在し、人と人がつながる仕組みがあるために広く使われていると説明した。
ユーザーが自発的に集まる仕組み
文部科学省で「メタバース検討チーム」の代表を務める黒田玄氏は、VR空間ではアバターを通して「現実に近い交流ができる点に本質的な楽しみがある」と話す。しかし、人を呼び込むために持続的なイベントを用意するには、予算上の問題が出てくるという。
黒田氏は、「UGC(一般ユーザーが生み出すコンテンツ)をどう確保するか」が重要と語る。例えば現実の渋谷駅では、路上で弾き語りが行なわれたり、ダンサーが踊ったりすることがある。メタバースでも同様に、ユーザーが自発的に集まりコンテンツが生み出される仕組みが必要との指摘だ。こうした「集まり」を促す仕掛けとして、メタバース上の都市で、パフォーマンス用の「ステージ」設置を例に挙げた。