半世紀前は年間1万2000円
大学の授業料は近年、諸物価の中でも最も値上がりしたものの一つだ。
都内の男性(73)によると、1968年に国立大学に入学したときは、授業料は年間1万2000円。在学中はずっと同じだった。当時は月8000円の奨学金があり、返済義務はそのうち3000円にとどまっていた。授業料の減免も幅広く行われており、「学生寮に住んでいた仲間には、減免措置を受けている人が多かった」という。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査などによると、68年の大卒初任給は月給3万600円。70年は3万9900円。年間授業料は、初任給の約3分の1程度。かなり安かった。
当時は学生運動が盛んで、「学費値上げ」は全学ストライキになりかねないリスクがあり、政府や大学当局は慎重だった。しかし、学生運動が沈静化するのに反比例するかのように、値上げラッシュが始まった。
大卒初任給は90年代以降、20万円前後で頭打ち。一方で、授業料は上がり続け、90年ごろには年間30万円を超え、現在は50万円を超えた。学生や親の負担感が増している。
都立大は司法試験の合格者も多く、予備校などの大学ランキングでは一部の旧帝大と匹敵するレベル。学部にもよるが、卒業後は都庁や23区の職員になる人も多い。学費の免除基準の大幅緩和は、優秀な学生が集まることにもつながり、結果的に都にとってメリットもありそうだ。