予定調和ではない世界
子どもたちが運営する4か国は、それぞれに抱えている問題や資源が異なる。以下、「国名」とその特徴だ。
ミチシオン:初期時点で人口が最も多い「経済成長国」。食料には恵まれているが燃料資源が乏しい。ミッションは「病院を作る」。
ポテスタ:2番目に人口が多い「超大国」。食料・燃料資源ともに潤沢だが、街と街が分断されている。ミッションは「路面電車を作る」。
アレテ:「文化国」で、中間に位置する人口を保有する。食料は多くない。領土の一部が海に侵されている。ミッションは「コンサートホールを作る」。
ホルン:人口は最少だが、燃料資源に恵まれた「資源国」。一方で食料はないに等しく、領土は砂で覆われている。ミッションは「国を緑化させる」。
実際にプレイしている画面、「ART(アレテ)で大規模デモ」
各国には、モデルとなる国・地域がある。ミチシオンは中国、ポテスタは米国、アレテは欧州地域、ホルンは中東地域だ。この設定は、例えば、ホルンだと砂漠が多く石油が多い「中東地域」といったように、モデル国・地域の環境や社会問題が反映されている部分もある。また、ミッションを達成するためにはプレイ中に発生する突発的なイベントに対応する必要がある。画面に「テロ発生」などのテロップが登場すると、実際にゲームの世界では領土が爆破される。「テロ」や「デモ」といった社会的な問題から「海面上昇」、「砂漠化」といった環境問題が国を襲う。
今回取材した「プログラミング教室MYLAB」で教室長を務める柿沼功さんは、宮島さんの考えに共感したひとりだ。子どもたちは国を運営する主体者として、他国と対立する状況からスタートする。イベントで重視しているのは「それをどう乗り越えることができるか、子どもたちに深く考えてもらうこと」だ。実は、対立を乗り越えられず、関係が悪化したまま終了する場合もある。「予定調和ではないからこそ、子どもたちにとって新鮮な学びになると考えています」。参加者である子どもたちの選択を尊重していると話した。
この発言通り、取材を進めると、子どもたちは「対立」、そして「想定外」の出来事が発生することに--。