最大級のパンデミックの恐れ
岡田晴恵・白?大学教育学部教授の著書『知っておきたい感染症―― 21世紀型パンデミックに備える』 (ちくま新書)は、鳥インフルエンザの人への影響について、さらに詳しく書いている。
それによると、「H5N1型鳥インフルエンザ」は、人類史上最悪のパンデミックを引き起こす可能性がある感染症だという。
1997年から2015年までにアジアなどで散発的に発生し、人の感染者844人、死者449人が報告されている。この数字からも分かるように、最大の特徴は、症状が重篤で致死率が高いこと。H5N1型でパンデミックが起きた場合、2億人前後の死者が推定されているという。
鳥インフルエンザは、もともとは鳥を宿主とするので人には感染しにくい。ところがインフルエンザのウイルスは、遺伝子の突然変異で、その性質を変化させやすい性質を持つ。変異は一定の割合で起きる。鳥の間で感染が拡大すれば、ウイルスが増殖するから変異ウイルスも増える。そして、「人型」のウイルスが出現することがある。そうなるともはや鳥型のウイルスではなくなり、人に感染する「新型インフルエンザウイルス」になる。人はこのウイルスに対する防御免疫機能を持っていないので、感染すると重症化しやすいという。
強毒型に感染した家禽は1日か2日で100%死ぬ。しかし不思議なことに、このウイルスの「運び屋」といわれる水禽類(カモ、アヒル、ガン、ハクチョウなど)の多くは感染してもほとんど症状が出ないのだという。その理由はわかっていないそうだ。