世界的に景気後退を示すシグナルが増え、米アップルも分岐点に立っている。ニューヨーク株式市場で2023年最初の取引となる1月3日、同社の株価は4%超下落し、時価総額は2021年3月以降初めて2兆ドル(約260兆円)を割った。
2022年および2023年1~3月の業績悪化を嫌気した動きだが、最大の要因は中国の新型コロナウイルス感染拡大で、iPhoneの3分の2を生産する鴻海精密工業(フォックスコン)鄭州工場の生産が落ち込んでいることだ。
「14」出荷台数予想を引き下げ
市場調査会社のTrendForceは、2022年のiPhone14の出荷台数を7810万台に下方修正した。前年比では22%の減少となる。同社の他、複数のアナリストが2023年1~3月の出荷台数も当初予想を引き下げている。
世界最大のiPhone生産拠点で、繁忙期には約20~30万人が働くフォックスコン鄭州工場では2022年10月に新型コロナウイルスの感染が広がり、従業員が大量離職した。その後も混乱が続き、年末時点の稼働率は70%以下にとどまっている。
iPhoneは例年9月前半に新機種が発表され、サイバーマンデー、クリスマスとビッグイベントが集中する11~12月に需要のピークを迎える。iPhone 14シリーズは高価格帯のProの人気が高かったが、鄭州工場の混乱で深刻な在庫不足に陥った。
iPhoneは中国での売れ行きがアップルの業績を左右するとも言われているが、2022年は工場の混乱だけでなく、ゼロコロナ政策や政策転換後の感染爆発で、消費も振るわなかった。
「iPhone 15 Ultra」どんな機種に?
2023年に入ると消費者の関心は既に、今年9月に発売予定のiPhone 15に移り、さまざまな「リーク」が報道されている。これまでに出回っている有力情報は以下だ。
(1) 4モデルを発売、最上位機種は2万6000円値上げ
発売されるのは6.1インチのiPhone15、6.7インチのiphone15 Plus、6.1インチのiPhone 15 Pro、6.7インチのiPhone 15 Ultraの4モデルが有力。iPhone 15の価格はiPhone 14と同程度になりそうだが、最上位機種「iPhone 15 Ultra」は、「iPhone 14 Pro Max」よりも最大で200ドル(約2万6000円)値上げされ、1299ドル(約17万1000円)になるとの予測が出ている。
ただしiPhone 15 Plusについては前機種のiPhone 14 Plusが不振で、早々に減産が決まったことから、二の舞を避けるためアップルが価格調整する可能性もある。
(2)Proにパープルが追加?
iPhone 15 Proのカラーは黒、シルバー、ゴールドに加え、新たにパープルが採用されるかもしれない。同モデルの背面パネルに2.5Dガラスパネルが使われることで、リアカメラ部分との段差が解消され、カメラの出っ張りが小さくなるとも予想されている。
(3)バッテリー性能大幅アップ
iPhone 15 ProとUltraにはTSMCの3ナノメートル(nm)で開発された「A17 Bionic」が搭載されることが確実視されている。3nmプロセスで製造された「A17 Bionic」チップは、5nmプロセスで製造されiPhone 14 Proに搭載された「A16 Bionic」に比べて消費電力を35%抑えられるといい、バッテリーの持ちが3~4時間延びるそうだ。
このほか、iPhone 15シリーズは全モデルでノッチが廃止され、USB充電はType-Cポートに切り替わると噂されている。これらはいずれも実用性の向上につながり、ユーザーの期待は大きい。
2022年前半は中国メーカーが軒並み不振で「アップルの一人勝ち」だったが、生産拠点を中国に置いていたことから、コロナ禍に巻き込まれ急失速してしまった。2023年に巻き返せるか、注目される。
Twitter:https://twitter.com/sanadi37