マイナス25度の世界で、シンプルに暮らす。20~40代の女性7人の暮らしや思いを通じ、「自分らしく生きる」とは何かを訴えるドキュメンタリー映画「-25℃ simple life」が、2023年1月13日に公開される。
同作を手がけた映画監督の松本和巳さんと、俳優の神野陽子さんに見どころを聞いた。キーワードは「選択肢」だ。
「子どもにノコギリを扱わせる」意味
映画は、車で牽いて日本各地を移動させられる家「タイニーハウス(tiny house)」の制作風景から始まる。子どもや大人がノコギリを使って木材を切りだし、組み立てた家は旅路を経て、北海道へ向かう――。
そのタイニーハウスで2年暮らす曽根優希さんをはじめ、北海道在住の羊飼い、山の案内人、おにぎり屋の店主など、立場の違う女性たちの暮らしにフォーカスしていく。心に傷を負った過去を持ち、大自然の中でシンプルな生活を送るうちに、自分らしい生き方や幸せを見出した人ばかりだ。
松本監督曰く、「一度、あらゆるものを捨ててシンプルに暮らしてみると、自分にとって本当に必要なものと、そうでないものが見えてくる」。現代社会は情報が氾濫しているが、人が処理できる情報量は昔に比べて増えているとは思えない、と言う。すると、気付かないうちに「自分に不要な物事ばかり入ってきてしまい、知るべき情報を取りこぼしたり、知らなくてもよかったはずのことで悩んだりする」のだ。
松本監督「幸せの形は千差万別です。周囲の意見や、自分自身の考えで『こうあるべき』と可能性を狭めてしまっている人に、『こうしてもいいんだよ』と伝えかった」
例えばタイニーハウス作りで、子どもにノコギリを扱わせたのも、「選択肢を増やす」意味があったと語る。危険だからと遠ざけるのでなく、大人が正しい使い方と注意点を教え、「凶器ではなく、楽しいモノづくりに役立つ道具だと伝えた方がいい」からだ。
松本監督「どんな選択肢を選んでも、責任が伴います。己の自由だけ先行させ、負うべき責任を放棄しないように、ということも同時に伝えていかなければと」