映画制作現場、多くが年収300万未満
スパサピとは、堤幸彦監督、本広克行監督、佐藤祐市監督らが発起人の、エンタメDAO(管理者を持たず、メンバーが主体的に共同所有・管理する分散型自律組織)。三人の映画監督と、映画プロデューサーの森谷雄氏が共同で制作指揮をとり、サポーターと一丸となって「原作づくりから映像化および配給(配信)に関する全プロセスの一気通貫」に挑んでいる。
ブロックチェーン技術を利用したクラウドファンディングサービス「FiNANCiE」の、「スパサピプロジェクト」をフォローし、トークン(暗号資産の呼称)を購入するとサポーターになれる。サポーターはコンテンツ制作過程を見守るだけではない。例えばコミュニティで実施される「トークン投票」を通じ、作品のキモとなるシナリオ設定やプロモーション方法に関する決定に関わるなどして、制作陣と一つの作品を作り上げられる。
トークンは、需要増に伴ってマーケットでの価値が上がる。クリエイターは、権利と金銭的リターンを得られる。資金調達とファン集めが同時に叶う仕組みだ。コミュニティには既に3000人のサポーターがおり、制作陣を支えている。
マツモトさんは、「クリエイターにとって一番の問題は、やはり『お金』だと思っている」と危機感をにじませる。決まった予算の中で赤が出ないように作るのが常なので、予算は比較的コントロールできるものの、収入はすぐさま上げるのが難しい。それが、業界を支える人材減を招く。映像制作や技術職を志す人が減り、IT業界へ流れている実感があるそうだ。
「日本映画業界で働く人の6割以上が年収300万未満だとされていると、是枝裕和監督たちが声を上げていましたね。朝から晩まで働いて、それなのにギャラが少ないイメージを突破したい」
マツモトさんは現在、コミュニティ運営や、ステッカーやパーカーといったグッズ作りに奔走しており、さらに今後は「クリエイターズアカデミー」設立を目指している。クリエイター志望者に学びとつながりの場を提供し、映像制作現場へ送り出して、業界全体の底上げを図る目的がある。
マツモトさんは、ポストコロナ到来に際して「できるだけコロナ前と同じように他者と接していきたい」と考える。同時に、バーチャルやリモートといったフィジカル接触が無い関係もより強く、濃くしたいという。「スーパーサピエンス」になぞらえて、理由をこう述べる。
「ホモ・サピエンスは他者とのつながりを大切にし、社会性を持ち得たからこそ、他の種を出し抜き、勝ち残ってきたわけですから」