急な3バックにも選手が対応できた
そんな森保監督に「違い」が出たのは、カタールW杯だ。
4年間、選手に対する委任の継続が実を結ぶ。急な3バックにも選手が対応でき、プレッシングのかけ方も選手間で決めることができた。日本サッカーは「マニュアル通りにしか動けない」と評されてきたが、委任戦術の徹底により、選手が自主的に動けるようになった。強制ではなく自発的だからこそ、守備に奔走した前線の選手たちから大会中に不満があがることもなかった。
森保監督の「ラージグループ」は、数百人の選手をふるいにかけるというより、選び抜いたW杯登録メンバーの倍の数である50人前後を固定して浸透させていく手法だった。ゆえに、「新戦力を呼ばない」という批判も起きた。だが、W杯初出場の谷口彰悟がスムーズにフィットできた点をはじめ、連携面はラージグループを重視してきた成果だ。
そして、森保監督自身も、明らかに変わった。
選手に任せきりだった予選とは違い、カタールW杯のドイツ戦では積極的な選手交代でドイツを混乱させた。予選や親善試合で見せなかったことで、データを相手にとらせず、グループリーグ最終戦も森保監督の戦略によってスペインが「パニックになっていた」(スペイン代表ルイス・エンリケ監督)。
それはメディアから「ただ蹴るだけで何の変化もない」と散々批判されてきたセットプレーも同様だ。クロアチア戦ではいくつか効果的なサインプレーがあり、見事に先制点を奪った。