約3年にわたって続いてきた中国のゼロコロナ政策が2022年12月、大幅に緩和された。厳しい行動制限や頻繁なPCR検査にストレスをためてきた国民は大喜びかと思いきや、感染爆発への不安を募らせている。
抗原検査キットの需要も増大。これを高値で売る転売ヤーに、高額の罰金が科される事例も出ている。
仕入れ値の2~3倍の価格で
中国政府は12月7日に、新型コロナウイルス対策の大幅な緩和を発表した。市民の行動制限に用いるアプリの運用を停止し、流行地域での全市民の検査も取りやめた。実態が把握できなくなったとして、無症状感染者の発表も打ち切った。
それまで中国は1人でも感染者が出ると分単位で行動を追跡し、感染経路を徹底してあぶり出して接触した人をまとめて隔離していた。「感染者が立ち寄った日に、同じコンビニを利用した」だけでも隔離の対象になった。
今回の緩和で、そういった追跡や感染の可能性がある人の隔離も行われなくなり、市民の間では逆に「自分も感染するかも」との危機感が高まっている。
緩和後は「検査で陽性になったら」「家族が感染したら」というワードの検索が急上昇。解熱剤や風邪薬を買い込む人も続出した。
北京市の衛生当局は12日、発熱外来の受診者が1週間前の16倍になったと発表した。行動制限が緩和されたにもかかわらず、感染リスクを避けるため北京市内は人通りが減っている。
国民の不安に乗じて、検査キットを高値で販売する転売ヤーも暗躍している。
政策緩和が発表された7日には、北京市朝陽区の消費者行政を管轄する当局が、抗原検査キットを不当な高値で転売しているとしてドラッグストアに20万元(約400万円)の罰金を命じた。発表によると12月1~7日、ECプラットフォームで抗原検査キット(25回分)を購入し、仕入れ値の2~3倍の価格で販売していた。
北京市海淀区の当局も12日、通報を受けて写真館を抜き打ち検査。複数のメーカーの抗原検査キットや販売明細書を発見し、市場価格を大きく上回る価格で転売していたと認定。30万元(約600万円)の罰金を命じた。2件とも「中華人民共和国価格法」第十四条第三項が禁止する「価格つり上げ行為」に抵触しているという。
「マスク詐欺」では罰金6000万円も
新型コロナウイルスの流行が始まった2020年初めには、マスクの不当販売や詐欺が横行し、仕入れ価格の数倍で店頭販売した天津と北京のドラッグストアが、いずれも罰金300万元(約6000万円)を科された。同年2月末時点でも、使用済みや粗悪品マスク、家庭用マスクを医療用と偽って販売した罪での逮捕者は1560人、押収されたマスクは3100万枚に上った。
今回も当局は検査キット絡みの不正行為を警戒しており、条例制定を進める地方政府も現れている。
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