新型コロナ再び感染拡大で「医療ひっ迫」 同じピンチなぜ繰り返すのか

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   全国の新型コロナウイルスの感染者数が急増している。2022年12月13日から15日にかけては、1日当たりの感染者数が16~19万人台。1週間の平均でも14万人を超えるようになった。年末年始にかけてさらに大幅に増える、という専門家の予測もあり、再び医療がひっ迫する恐れが出ている。

  • 「第〇波」が来るたびに医療崩壊の危機が…なぜ防げない?
    「第〇波」が来るたびに医療崩壊の危機が…なぜ防げない?
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何度も「医療崩壊」が問題に

   東京都は15日、専門家によるモニタリング会議を開いた。NHKによると、新規感染者の7日間平均は、12月14日時点で1万4290人。前週比でおよそ120%となり、7週連続で100%を上回っていることが報告された。入院患者数も3764人と、前週比で463人増えた。

   専門家は、このままのペースで感染が拡大すれば、1日の感染者数が、2週間後には今の1.4倍にあたる2万人、4週間後には2倍にあたる2万9000人を上回るとの予測を示した。

   会議で専門家は「新規陽性者数の増加傾向が続く中、年末年始に向けて感染が一気に拡大する可能性がある」とも指摘したという。

   心配されているのが医療体制だ。年末年始は、休診になる医療機関が多い。コロナに感染し、運悪く重症化した場合、きちんと診てもらえるのか、という不安がある。過去7回の「波」では何度も「医療崩壊」が問題になってきた。

   東京新聞は22年8月18日、ウエブサイトで、「病床数世界一なのに... 医療逼迫なぜ繰り返す? 鈴木亘・学習院大教授に聞く」という記事を公開している。 鈴木教授は医療経済の専門家だ。

   鈴木教授によると、コロナ患者の入院に対応可能な「感染症病床」と「一般病床」は都市部を中心に計約90万床。しかし、入院確保病床は第7波でも約4万6000床と5%程度にとどまった。日本は病院が多いが、その約7割は200床未満の中小病院。病院が多すぎて医師や看護師、設備といった「医療資源」が分散している。つまり、一病院あたりの医療スタッフが諸外国に比べて少ない。

   日本の問題は、大病院が少ない上に、大病院に医師が集まって治療に当たる欧米のような総動員体制が取れないことだと指摘する。さらには大病院と中小病院の連携もできていない。

「不都合な真実」がある

   医者で医療経済ジャーナリストでもある森田洋之氏は、この問題をよりストレートに『日本の医療の不都合な真実――コロナ禍で見えた「世界最高レベルの医療」の裏側』 (幻冬舎新書)で語っている。

   同書によると、日本では1970年代の老人医療無料化の後押しもあり、1980~90年代に病床数が世界一になった。人口当たりで日本は現在、英国やデンマークの約5倍の病床を持っている。医療機器のCT、MRIの人口当たりの保有台数も日本がトップ。2位を大きく引き離している。


   大量の病床とハイレベルの医療機器――。患者からすると頼もしいが、日本の病院をビジネスという観点から見ると、リスクが大きい。病院の建設費や高額医療機器への投資を、患者の治療費で回収しなければならないからだ。そのためには、「常に満床」であることを必要とする。いざ急患が発生しても、地域のどの病院も満床で空きがない――救急車のたらい回しなどが報じられる背景にもなっているという。

   森田氏によれば、日本の病院は「想定外の事態のために空床を確保しておく余裕が取りにくい」。それゆえ「世界一の潤沢な医療資源を有事の際にスピーディーに運用・活用することができないという医療システム上の問題」があるのだという。

   「普段でさえ救急車のたらい回しが問題になるのに、日本の医療機関、民間病院が自主的にコロナパンデミックのために病床を空けることができるでしょうか」と問いかけている。

   本書では諸外国との違いも示されている。日本では病院の7割は民間だが、西欧先進国では公立が中心だ。そのため患者を特定病院に集中させるなど、病院・病床の柔軟な運用が可能だった。政府の指示が徹底しやすかったようだ。

年末年始の医療体制を強化

   このところ、コロナでは、感染者の増加と同時に死者も増えている。すでに1日200人を突破し、12月15日は277人。第6波のピークと肩を並べた。かなり深刻な事態となっている。

   NHKによると、東京都は、年末年始の診療・検査体制を強化する。具体的には、新型コロナやインフルエンザの発熱外来について、12月29日から1月3日にかけて12の都立病院で診療スペースを整備し、平日と同じ程度の、一日で合わせておよそ1000人を診療できる体制にするという。

   また、帰省や旅行する人向けに、12月24日から1月12日にかけて、東京駅や品川駅など、移動の中心となる8つの駅やバスターミナルで、臨時の無料検査場を設ける。

   小池百合子知事は、「年末に向けて人の動きが活発になる中、医療機関の休診が増えることで不安に感じる都民も多いと思うが、関係者としっかり連携して万全な体制を構築したい」と話している。

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