いい歳こいて...
「私らしく歳を重ねる」は、中高年向け雑誌の定番テーマである。特集のリードには〈昔と比べるのではなく「いまの私」を楽しむために。歳を重ねたからこそ、楽しめることがあります〉とある。どちらかといえば、年齢なりの楽しみに挑戦しましょうと読める。吉本さんはその「歳相応」にも染まらず、あくまで自分本位の老後を貫く。
では、60代後半に「も」なって二座マニュアルのスポーツカーを転がしている私も、歳相応の生き方を無意識に拒んでいるのだろうか。そうかもしれない。吉本さんは「中身も外見に負けないよう、柔軟でなければならない」という。当方もせいぜい、車高113センチに乗り降りできるだけの足腰と腹筋、柔軟性の維持に努めたい。
確かに、私も優しい少女らから優先席を譲られる機会が増えた。それでも、いつまでも「いい歳こいて」と言われるジジイを続けたいと 心から思う。もちろん公序良俗に従い、人様に迷惑をかけない範囲においてである。
吉本さんのメッセージの核心は〈あるがままでいよう...無理して"らしさ"に身を染めると自分がどんどん薄まっていく〉という部分だろう。
それでなくとも、年齢とともに社会での存在感は薄れていく。ならば服装や髪型、物腰や動作までを「らしく」せず、自分に正直にフェードアウトしていきたい。
冨永 格