【連載】サッカー・カタールW杯 森保ジャパン勝負の1年
日本が優勝候補ドイツを破る――。FIFAワールドカップ2022カタール大会で、日本代表が起こした「ジャイアントキリング」、カギはどこにあったのか。
森保一監督の3バックへの変更や数々の選手交代への称賛もあるし、逆に前半のドイツの可変システムに対応出来なかったことやドイツのシュート精度の低さから「ラッキーな勝利」という批評もある。データで言えば完敗だった。
そんななか、筆者が注目したのは70分の、GK権田修一が見せた4連続シュートストップだ。
PK失点とノーゴールが伏線
この時の最初の2本のシュートでは、日本の選手たちは相手オフサイドをアピールし、動きが緩くなっていた。
しかし、私がリプレイを見た限り、ドイツのニャブリはオフサイドではなかったと思う。にもかかわらず、日本選手たちは確信を持ったように審判団にアピールしていた。
これには伏線がある。
45+4分、オフサイドポジションにいたニャブリが「ゴールを決めた」シーン。その後、得点は取り消されたが、このプレーで副審はオフサイドディレイのフラッグアップをしなかった。
つまり、ミスジャッジをしていたのだ。
確かに審判目線では簡単ではない見極めではあるが、試合中の選手感覚は違う。さらにVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)がチェックし、判定がノーゴールになるまでに90秒近くかかった。
PK判定(妥当なジャッジではあるが)での失点、オフサイドがVARでノーゴールになるまでのプロセスから、日本の選手による審判団への疑念が生じても仕方がない。実際に、Abemaで解説を務めた本田圭佑は、副審への不満を語っていた。
それだけに、70分の4つのシュートのどれかが決まってしまっていれば、2-0というスコアだけでなく、オフサイドだとセルフジャッジして足を止めた選手たちが、緩慢さを恥じるか、そのストレスが審判団に向かうなどして、最悪な雰囲気になった可能性が高い。あの時間帯、あの状況での権田のスーパーセーブは、1得点と同じ価値があったと言える。
「現実を受け止めて次に」素早い切り替え
試合後の会見で権田は、自身のプレーに対するPK判定への不満を語りながらも、「事実は変わらない」「PKを決められてしまった現実を受け止めて次に行こうとした」とメンタルを明かした。その前向きな姿勢と切り替えの早さが、目の前のプレーへの集中に繋がり、ドイツの決定機を何度も打ち砕けたのかもしれない。権田はこの試合、マン・オブ・ザ・マッチに選出された。
もちろん、他の選手たちが集中していなかったわけではない。ただ、権田のスーパーセーブの陰で、選手のセルフジャッジが致命傷につながりかねない危うさが垣間見えた。次戦以降はピッチにいる日本選手全員、笛が鳴るまでプレーを続けて欲しい。(選手敬称略)
(石井紘人 @ targma_fbrj)