21世紀の名品 中野香織さんは「私たちの責任で認定しよう」と

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表現に歯切れと勢い

   とりあえず、プレシャスの特集「持たない時代の『名品』考~あなたにとって、本当にほしいものとは?」のリードを読み返してみよう。

   〈時代が大きく動いたこの数年、自らのライフスタイルやおしゃれを見直した人も多いことでしょう...今回の特集でこだわったのは、今、前を向かせてくれる力を携えた名品である、ということ...身につけるだけで幸せな気持ちをもたらし、毎日をご機嫌にしてくれるもの...〉と展開する。

   ファッション誌らしく「高価な名品」の紹介が延々と続く中、3人の筆者によるコラム集「持たない時代に『持つ』ということ」は、私にすれば貴重な読みどころである。

   中野さんが「名品」に求める新たな条件は、いわゆるSDGs(持続可能な開発目標)に沿ったもので、その意味で驚きはない。ただ「名品の所有によって安心感や優越感を得ようとするのは時代錯誤」「価値観も上下ではなく縦横に多様化する時代」「私たちの責任において『名品』と認定していく」といった表現に、歯切れと勢いがある。

   文章の勢いは、筆者の自信のほどに左右される。言い切るだけの知識や経験、根拠、洞察力を持ち合わせているかどうか。服飾史に通じ、私生活でも「名品の育成」に挑んでいるという中野さんだけに、説得力がある。

   まとめ部分にある「面倒です」の4字に、自信とプライドがこもる。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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