「かわいいがひとつの価値観」に疑問
脚色・演出を担当しているぬこぽつさんに取材した。現実でも2016~19年の間、小劇場で活動し、演劇制作に携わった。
VR上で行われる演劇は、一般的にオリジナル脚本によるものが多いという。そんな中で「シェイクスピアをやったら面白い」と考え、今回は広く知られている「マクベス」を選んだ。自身が現実で演劇に深く関わるきっかけとなった演目もマクベスだったと振り返る。
今回のコンセプトは「VRだけど、VRじゃない」だ。たまたま劇場がVRCというプラットフォームにあり、一緒に制作をしたい役者と「VRで出会っただけ」。しっかりと稽古を行なう、また音響や照明、ドラマトゥルク(演出助手や助監督のようなもの)といったスタッフを用意するなど、現実の演劇の手法をVR上に持ち込むのが目的と話す。
マクベスの凄惨なストーリーとは裏腹に、公演ではかわいらしい見た目のアバターが数多く登場する。キャスティングのねらいについても聞いた。
VR上では現実の性別や容姿に関係なくアバターを選ぶことができ、可憐な容姿のアバターを使う人は多い。こうした背景からか、ユーザーからは「メタバースでは美少女になれる」との声をたびたび耳にするのだという。そんななか、VR上で「かわいいがひとつの価値観」となっていることに疑問を抱いてきたと、ぬこぽつさんは話す。
他方、「ともよろう」さんの姿は少女でありつつも、マクベスが心に抱く恐れや醜さを演技で伝えている。「肉体としての人格、アバターとしての人格、役の人格。その3つを役者が宿したとき、観客からはそのアバターはどう見えるか?」と観客に投げかける意図があるとのことだ。
公演は、11月25日22時、そして26日の18時と22時にそれぞれ行う。公演時間は100分を予定。25日は、ユーチューブ上で配信も行う。