飼い猫(ネコ)が新型コロナウイルスに感染したという症例が、北海道で報告されている。ペットの猫の感染例は、これまでに海外では知られていたが、日本で判明したのは初めてだという。厚生労働省や農林水産省、環境省は、ペットを飼っている人に注意を呼びかけている。
飼い主家族から感染か
NHKが2022年11月10日に伝えたところによると、北海道中標津町で動物病院を経営する山田恭嗣獣医師は昨年8月、呼吸器の症状が出ていた12歳のメスの飼い猫を診察した。体温は37度3分で異常はなかったものの、くしゃみや鼻水、目の充血などの症状が見られた。
猫の粘膜を採取し、国立感染症研究所で分析した結果、新型コロナウイルスのデルタ株に感染していることが確認されたという。
飼い主を含め同居する家族5人もデルタ株に感染していたことから山田獣医師は、ヒトからこの猫に感染した可能性があると診断した。
抗炎症剤の投与などの治療を行ったところ、呼吸器症状に回復傾向がみられ、治療に一定の効果があった。
山田獣医師は今年4月、この猫の感染例を日本獣医師会の雑誌に論文として発表した。新型コロナに感染し、発症した動物の症例が学会に報告されたのは国内では初めてだという。
同じニュースは北海道新聞も報じている。同紙の取材に対し、山田獣医師は、「症状だけで新型コロナと診断するのは難しく、飼い主の感染などの申し出が不可欠。情報がなく見過ごされた例もあるのではないか」と話している。
海外では数例
環境省のウェブサイトによると、新型コロナに感染したヒトからペットに感染する事例は海外で数例確認されている。 厚生労働省のウェブサイトによると、動物園のトラやライオンの感染(飼育員から感染したと推察されている)事例も報告されている。
猫については、新型コロナの感受性が他の動物種よりも高いとの報告があり、実験室内での感染実験では、猫が他の猫に感染させ得るということも分かっているという。 農林水産省のウェブサイトによると、これまでのところ牛・豚・鶏のような代表的な家畜に感染したという報告はない。また、ペットからヒトに感染した事例は報告されていないという。
環境省、厚労省、農水省はそれぞれのサイトで、「新型コロナウイルス感染症に限らず、動物由来感染症の予防のため、動物との過度な接触は控えるとともに、普段から動物に接触する前後で、手洗いや手指用アルコールでの消毒等を行うようにしてください」などと注意を呼び掛けている。