ツイッター社を買収したイーロン・マスク氏が、ツイッターの有料化を検討――。そんなうわさが、インターネット上に出ている。真偽は不明だが、利用に支払いが求められるようになれば、多くのユーザーが他のSNSプラットフォームに流出するだろう。
ツイッター上では、有料化が現実となった場合の「移住先」として、さまざまなSNSの名前がユーザーの間で飛び交っている。
「mixi」に再帰?
発端は米国のSNS関連メディア「Platformer」の2022年11月8日付記事。「事情に詳しい関係者」の話として、マスク氏が次のようなアイデアについて会議を行なったと報じた。ツイッターの毎月の利用時間に制限を設け、ユーザーが超過して閲覧を続ける場合には課金を求めるというものだ。
移住先候補としてよく名前を目にするのは写真や動画投稿をメインとしたSNS「インスタグラム」。漫画家の吉田戦車さんは11月10日、22年夏に閲覧専用のインスタグラムアカウントを開設したとツイート。「 Twitterが有料化したらそっちになるのかな...」と、インスタグラムへの移行を示唆した。
2004年にサービスを開始し、2000年代後半に大きな流行をみせた「mixi」。ツイッター上で「Twitter有料化」というワードがトレンド入りした11月9日には、「mixi」もトレンド4位に入るなど、注目を集めている。趣味や出身校といったテーマに沿った掲示板を通して、情報交換ができる「コミュニティ」機能が特徴的だ。
タレントのデーブ・スペクター氏は11月4日放送の情報番組「バラいろダンディ」(TOKYO MX)にて、有名人のツイッターアカウントに付与される「認証バッジ」の有料化方針をテーマにトークを行なった。自身でも認証済みのアカウントを有するが、今後ツイートのために支払いが必要になる可能性について指摘されると、「自由であることはSNSの基本」だとし、本当に課金が必要になった場合「mixiにもどります」とコメントした。
また11月8日付ブルームバーグによると、近ごろは「マストドン」というSNSの利用者が世界的に急増している。ツイッター買収完了が伝えられた10月27日から11月7日までに、マストドンに新たに加入したユーザー数は48万9003人に達したとのことだ。
2016年にサービスを開始したSNSで、ツイッターのように短文を投稿できる。各投稿について全ユーザーに公開するか、一部の人だけに公開するかを都度設定できるといった特徴を持つ。
「荒れない」メリットがあるサービス
ITジャーナリストの井上トシユキ氏に取材した。話によると、SNSの利用目的はユーザーによって異なるため、ツイッター有料化が現実に起きても、移行先がどこかは一概には言えないようだ。まず、不特定多数に向けて発信を行いたい著名人やそのファン層のユーザーはある程度残り続けるのではないかと井上氏は指摘する。
その上で、社会的な主張など、何かを不特定多数に発信したいユーザーでは、動画サイト「ユーチューブ」に移住する動きが多くなるのではないかと推測する。近ごろはすでに、ユーチューブの動画で時事・社会問題について語るユーザーが増えているという。
ツイッターでは情報の拡散速度が速いというメリットはあるものの、反対意見を持つ人や、いわゆる「アンチ」から意図せぬ反応を寄せられるリスクがある。ユーチューブであれば、「アンチ」は何分も嫌いなユーザーの動画を見る行動は取りづらい。そのため、ユーザーからするとツイッターと比べて「荒れない」メリットがあるとのことだ。
世の流行を把握するためにSNSを利用しているライトなユーザーであれば、有料化後にツイッターに残る人はあまりいないのではないかと推測。今後は複数のアプリを使い分け、情報収集をしていくのではないかと語る。ショート動画プラットフォーム「TikTok」ならば人気の動画などで、LINEならばアプリ内のニュース機能で世の動向を追うことはできる。
また不特定多数と交流するためにツイッターを使っているユーザーなら、TikTokやインスタグラムに移行する人が多いのではないかとみる。
ただ、近ごろはアカウントを非公開設定にし、不特定多数ではなく仲の良い人とのみ交わるユーザーが増えている印象と井上氏。そうした点から、知り合いと交流がしやすいLINEの人気は「根強い」と指摘した。