京セラが、自社の切削工具について紹介する展示ブースをメタバース内で公開した。金属版の加工などに用いる工具「エンドミル」や、CO2(二酸化炭素)排出量削減を目指す「カーボンニュートラル」への取り組みを伝えている。
現実世界では、工作機械の展示会「第31回日本国際工作機械見本市」(JIMTOF2022)」に出展。東京ビッグサイト(東京都江東区)で2022年11月13日まで開催される。今回のバーチャル(VR)展示ブースは、これにあわせて用意したものだ。JIMTOFスタート前日の11月7日、VR記者カスマルはプレスツアーに参加した。
実際の展示ブースを再現
VR展示ブースは、メタバースプラットフォーム「VRChat」で運営されている。ブースのワールドに入ると、そこは空中に浮かぶ島。巨大なプロペラを備えたビルが緑豊かな木々に囲まれており、自然と人工物が調和した外観に仕上がっている。
ビルの1階部分は、現実のJIMTOFの展示ブースを再現したスペースだ。京セラが販売する電動工具や、同社の最先端技術を搭載したコンセプトカーを設置している。
「マシニングセンター」と呼ばれる箱状の工作機械は、横にあるボタンを押すと稼働。金属板を削り出す様子を楽しめる。
VRならではのプレゼン
室内ディスプレーの横に設置されている青いボタンを押すと、プレゼンテーション用のエリアにワープする。そこで、京セラによるカーボンニュートラルへの取り組みに関する解説が行われた。
同社は2019年のCO2排出量を基準として、2030年には46%の削減を目標とし、さまざまなカーボンニュートラルの取り組みを行っている。例えば、切削加工時におけるCO2排出量の目安を算出してくれるウェブサイトを公開している。
切削加工においてCO2排出量を削減するには、高能率な加工により省エネルギーを実現できるかがポイントとなるという。
「京セラ イージーツールガイド EX」というサイトでは、事業者が現在使っているエンドミルと、京セラが販売するエンドミル「MFH」シリーズの加工能率やCO2排出量を比較可能。工具のサイズや切削速度といった各種条件を入力することで算出できる。
「切削ラインCO2排出量シミュレーション」サイトでは、加工場の所在地域や生産台数、機械サイズといった情報を入力し、切削ラインにおけるCO2排出量を試算できる。どの工程を改善すれば排出量削減につなげられるかがわかるとのことだ。
解説中には、金属版などに切削工具により切り込みを施す「溝加工」を実演。ステージの下から「マシニングセンター」が出現し、客席の目の前で加工の様子を披露する。VRならではの臨場感あるプレゼンテーションだ。
最後に、会場をフルに利用したインスタレーション(展示空間を使った芸術作品)を上演した。カーボンニュートラルの取り組みが実現する「サステナブルな世界」を表現しているという。
会場がドーム状の白い天井に覆われたかと思えば、風車の回る草原が出現。青空が夜空に移り変わると、光の粒子で表現されたクジラやクラゲがいきいきと飛び回る。最後は鮮やかに輝く大木の後ろに、今回のVR展示ブースのビルが出現。最先端技術と自然が共生する未来を感じとれるパフォーマンスだった。
このVR展示ブースは、JIMTOF開催期間の11月8日~13日の間、17時~23時まで一般公開している。参加するには、VRChat上で「kyocera1」というIDのアカウントに「Join」(合流)する必要がある。