バイトダンスはPICOの海外販売に注力
一方、テンセントとの争奪戦の末に2021年夏にVRデバイスメーカーの「PICO Technology」を買収し、「メタバース大戦」に名乗りを上げたのが、ショート動画「TikTok」で世界に名を知られるようになったバイトダンス(字節跳動)だ。PICOの買収額は公表されていないが、業界では15億ドル(約2200億円)に上ると推測されている。
同社は今年10月、コンシューマー向けVRヘッドセット「PICO 4」とビジネス向けVRヘッドセット「PICO 4 Enterprise」を発売した。日本をはじめ海外展開にも力を入れ、PICO4はメタの「Meta Quest 2」の競合製品になる。
SNSではFacebookがTikTokに押されているように、メタのメタバースビジネスも今後、PICOの圧力にさらされることになるだろう。
ただ、バイトダンスのプロダクト・戦略副総裁の朱駿氏は昨年11月に行われた中国メディアのインタビューで、「AR/VRはオフィスワーク、学習、動画、エンターテイメントに導入できると期待しているが、『メタバース』と関連付けたものではない。メタバースは大きすぎ、抽象すぎる概念だ」と慎重姿勢を強調した。
テンセントもバイトダンスも、実際にはメタバースを非常に有望な分野とみなしているだろう。だが、中国政府はIT企業がデータや富を独占していると批判し、メタバースの重要な要素であるNFTも先行きが見通せない。そもそも2社は、メタバースがビジネスとして軌道に乗るのは、数年先になると見ている。当面はできるだけ目立たない形で投資を続け、面倒ごとに巻き込まれるのを避けたいというのが本音のようだ。
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