木材のプロ考案「木の心地よさ感じられる場」 家具設置だけで印象一変

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異彩を放つ「緑」の正体

   唯一、搬入前後で設置家具に差がないのが(2)。元のテーブルにも木目があった。

搬入前の状態。主に、打ち合わせやミーティングの場として使われている
搬入前の状態。主に、打ち合わせやミーティングの場として使われている

   搬入後は、より木の「素材感」を前面に押し出したテーブルになった。くっきりとした茶色と、白に近い茶色が組み合わさり、バイカラーのようだ。イスも木を伐りだして作っており、丸太型の切株が2つ、背のないベンチ型が3つ。ベンチ型は、木についている枝がそのままイスの足となっている。

柳瀬さん「テーブルは、30センチ幅の板材を3つ剥ぎ合わせています。それから、浅見さんに頼み込んで置いてもらった『コケリウム』が良いアクセントになっています」
浅見代表「山に入ればコケだらけなので、これまで気にも留めていませんでした。でもこうして飾ってみると、みずみずしくてきれいですね」
柳瀬さん「植物なのでお世話が必要なのですが、水やりも気分転換やコミュニケーションのきっかけになってくれればいいなと思います」

   コケリウムは、(4)の天板の上にも飾られている。クリーム色に近い、淡い茶色の家具の中で、鮮やかな緑が異彩を放つ。

浅見代表が、本物の竹を使ってコケリウムの器を作った
浅見代表が、本物の竹を使ってコケリウムの器を作った

   二人は数々の家具を通じ、「自然な流れで、近くにいる相手と木の話をしたくなる」雰囲気を作りたかったと総括する。

   木材はこれまで、建築材料として使えるか否かで価値判断がされてきた。しかし曲がっていたり、節が多かったりしても、それらを個性として受け止めれば見え方が変わってくる。浅見代表も柳瀬さんも、使う人にとって良い木とは何なのかを考え、木材の魅力を引き出すことを第一に、家具へ落とし込んだ。

浅見代表「全ての家具を木材にしなくてもいいんです。たとえ一部であっても、木でできた家具を置いて『そこに行くとほっとできるスペース』を作ること。そこから、木材活用の第一歩が始まります」

   連載第四回はJR東日本協力のもと、家具搬入直後の心境・行動の変化などについてアンケート調査し、回答結果をレポートする。


柳瀬弘典(やなせ ひろのり)
株式会社乃村工藝社 空間デザイナー
文化施設・企業PR施設などの空間デザインを主に担当。2020年オープンの乃村工藝社新オフィス内コミュニケーション・スペース「RESET SPACE_2」にてオリジナル家具を担当したことを契機に木材活用に興味を持つ。近年は、大学や企業オフィスなどの非住宅における木質化プロジェクトに参画し実績を増やしている。直近では「王子ホールディングス株式会社本社(本館ビル)エントランスリニューアル」(2022年10月)デザイン・設計を担当。
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