■連載(第3回)
東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)新幹線統括本部「東京新幹線運輸区」の一角に、無垢材家具を導入し、「木の心地よさを感じられる場」を生み出す様子や、社員の心身や行動、働き方の変化を、J-CASTトレンドが取材・検証し、伝える連載。
第3回は、家具搬入前後の変化を写真で見ていく。テーブルや本棚を、どのようなコンセプトで作り出し、また配置したのか。家具提供および搬入・設置を担った西川バウム(埼玉県飯能市)の浅見有二代表と、デザインアドバイス協力の乃村工藝社(東京都港区)デザイナー・柳瀬弘典さんを取材した。
材料本位でデザインを考える
「木の心地よさを感じられる場」のデザインに際し、柳瀬さんが前提にしたコンセプトは「日常の景色にプリミティブ(原始的・素朴)さを感じる、マグネットスペース」。
このコンセプトをもとに柳瀬さんがラフを描き、浅見代表が適した木材を選んで、家具を作った。浅見代表は、元となった木が生えている姿を家具から想像できるか、を重視したと話す。
浅見代表「見た目だけ似せているものとは違う、素材感・本物感を味わってほしいと考えました。微妙な色の違い、手触り、においとか。もちろん、木そのものの個性も」
柳瀬さん「無骨さが前面に出ないように気を付けつつ、可能な限り素材の持ち味を生かした形にしたいと思っていましたね。」
こうした思いで設置した家具は、大まかに、(1)1本の丸太をそのまま縦に割ったようなデザインの本棚、(2)2組のテーブルとイス、(3)ヒノキの角材を並べた縁側デッキ、(4)木を割った板を横に積んだ本棚、の4点。「東京新幹線運輸区」に入ると正面に見える壁に置いた(1)を軸とし、(2)が左、(3)が右にそれぞれ展開、(2)と(3)前の壁際に(4)が置かれている、線対称の構図だ。
搬入前の状態は画像2を参照。(1)にはラックとハンガー掛け、(2)はテーブルとイスが2組、(3)は周囲の視線を遮断できる背の高いイスとテーブルがあった。
柳瀬さん「デザインの起点になったのは、(1)本棚でした。特に思い入れがあります」
浅見「私にとっては制作に一番時間がかかった家具です(笑)さまざまな木材を、バランスを見ながら組み合わせるのが難しかったですね」
浅見代表のイチオシ家具は、(3) 縁側デッキだ。人のすねほどの高さで、思わず寝転びたくなる。
浅見代表「例えば、ここに同じ長さのソファを置いても、心理的な距離感の兼ね合いで3人は座らないと思います。もし先に誰か使っていたら、座るのに抵抗がある人もきっといますよね」
柳瀬さん「すると、実質1人用になる可能性も...」
浅見代表「そうなんです。でも縁側デッキなら、座れる場所(辺)がいくつもあるので必ずしも横並びでなくともよく、一緒に使いやすい。側面や背面が空くので荷物も置けます」