コロナ禍で「仕事ゼロ」のピンチから一転
福宮さんもまた、自主企画に精を出す一人だ。原点は2014年に立ち上げた「team.鴨福」。ピアニストによる生演奏、漫画家によるイラスト投影、そして福宮さんによる歌唱と朗読というスタイルで公演してきた。
しかしコロナ禍で「team.鴨福」の活動はじめ、芸能系の仕事が全部なくなった。追い詰められた中で発見したのが、文化庁の助成金だった。
福宮さん「文化芸術活動の継続支援事業ですね。申し込み締切直前に、役者仲間3人と自主映画の企画を立ち上げて、何とか書類作って滑り込んで。気づけば、堤幸彦監督がメガホンを取ってくれることになり......」
仲間の一人が、堤監督の映画によく出演していた縁だ。「女優が自分で映画をつくるなんて面白いじゃないか、と思ってくれたみたいで」と福宮さん。信じられない気持ちだった。
福宮さん「そこからはもう、雪崩のような勢いでした。(堤監督は)クリエイティブにかけてはもちろん一流なのですが、人を巻き込むという点においてもすごかった」
山下さん「その過程も、映画にして良いくらいですね」
初めて顔合わせをしたその場で、堤監督は脚本家に電話を掛けてオーダー。脚本の初稿完成を待つ間に、カメラマンはじめ制作スタッフに協力を呼びかけたという。
福宮さん「スケジュールに余裕がなく、予算も潤沢にあるわけではないので、撮影場所はスタジオだけで、いわゆる会話劇という形式です。70分の映画を丸2日で撮りました」
そうして完成したのが、「精子バンク」をテーマに、1人の男と同時期に交際していた3人の女性が激しいやり取りを繰り広げる映画「truth~姦しき弔いの果て~」だ。
映画への出演経験が「それまでほぼなかった」福宮さんにとって、映像現場における作法やルールを知らないまま撮影に挑む不安はあった。しかし「全てが新しかった」。
福宮さん「映画作りというと、これまで私が携わってきたのは吹き替えの仕事。こうして実際に一から作り上げるまで、音がどう処理され、映像に合わさるのか未知でした。パッケージングして、プロデュースもして、新しいことしかなくて楽しかった」
山下さん「(新しいことを)純粋に楽しめたのはすごいですね!」
福宮さん「でも、女優3人でめっちゃケンカもしましたよ(笑)作品をどうプロモーションしていこうか、とか。大事にしているものがそれぞれ違うし......」
「そこがでも面白いんだよね、ものづくりって」と岡本さん。誰もが真剣に作品を良くしようとしているからこそ、時にぶつかることがあるのも、創作の醍醐味だ。
岡本さん「苦しい、きつい、時間がない、ってことが、やがて、楽しい、うれしいにつながる。喜んでくれる人がいる、楽しんでくれる人がいると思うから、頑張れるんだもんね」
福宮さん「作っている間も自分の中で盛り上がりはありましたが、今年の1月7日に劇場で作品を皆さまに観ていただけた時の喜びがまた。違った感情がぐっと来ましたね、本当」