経済ニュースより、「あなた」の話を聞きたい
編集部:一定の知名度があるパーソナリティーたちは、Voicy のどこに魅力を感じていると思いますか。
緒方:多くの人に知ってもらう場合は、ツイッターやインスタグラムの方が圧倒的に強いです。そこで認知されたうえで、さらに深いファン層を集められるところでしょうか。
Voicyでは、1つの放送の中に「チャプター」(編注:話題ごとに区切られた章)をいくつも作れます。1つのチャプターは最長10分で、リスナーはある程度の時間、習慣的にコンテンツに触れてくれています。 音声はニュアンスまで伝えられて、もし間違ったことを言ってしまっても謝罪が受け入れられやすい。そうした関係をリスナーと作れる点に、パーソナリティーたちは価値を感じていると思います。最後まで話を聞いてくれて、受け止めてくれる人に向けてしゃべれる「心理的安全性」ですね。
DJ Nobby:そこが本当にすごいなと。僕みたいな弱小アカウントでも、ツイッターだと変なコメントが来るときがあります。でも、Voicyはほぼ来ないです。
これは緒方さんも言っていたんですけど、「嫌いな人の声は10分も聞けない」。つまり、ちゃんとファンが集まってくる。音声の「安全性」と合わせて、大きいと思いますね。
緒方: DJ Nobbyさんは「経済ニュースを伝える」から、「その人の一言が欲しい」になってきたところがすごいですよね。
DJ Nobby:そのプロセスは面白いですよね。
編集部:つまり、どういうことでしょう。
緒方:Nobbyさんの場合、リスナーは「昨日の経済ニュースを5分でインプットできる」という効果性を重視して、放送を聞き始めるはずです。それが徐々に、パーソナリティー独自の知識や人間性の方にニーズがシフトし、「有料でも聴きたい」人が出てくるわけです。
DJ Nobby:最初、緒方さんに「経済の番組をやりたい」と相談したら「効果が分かるタイトルにしたら?」と言われたので、チャンネル名を「きのうの経済を毎朝5分で!」にしました。ありがたいことに当初から、「すごくわかりやすい経済ニュースだ」と盛り上がったのですが、先日出版した著書「実は大人も知らないことだらけ 経済がわかれば最強!」のイベントを行った際、リスナーさんから口々に「土曜日の夜のゆるっと話している配信が一番好き」って言われたんですよ。
緒方:番組がきっかけでインフルエンサーになっていった、Voicy初の例じゃないかと思います。優秀なプラットフォームとパーソナリティーの相乗効果ですね(笑)。
編集部:相乗効果と言えば、他のプラットフォームやメディアとVoicyの相性はどうでしょう。
DJ Nobby:僕のチャンネルは、ラジオとのタイアップで収益をあげている部分があります。そういった意味で、メディアを使わせてもらえるのはありがたいです。
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緒方代表は、特に活字ニュースメディアについて「時代が早すぎるので、記事になった頃には遅く、もはや後々の『答え合わせ』」と語る。例えばツイッターで大いに話題となった商品を、メディアが翌日に報じても、読者は「昨日タイムラインに流れてきた話が、今頃ニュースになったのか」と感じるのではないか。
次回は、目でなく耳で情報を得るニーズの高まりを踏まえ、音声配信の未来を2人が語り合う。