フィンランドを代表するライフスタイルブランド「イッタラ」。その歴史と現在を紹介する日本で初めての大掛かりな展覧会が、東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開かれている。
創立140周年
「イッタラ」は1881年、フィンランド南部のイッタラ村に設立されたガラス工場がルーツ。多くのすぐれたデザイナーたちと、研究熱心な職人たちに支えられ、陶磁器などにも分野を広げながら成長・発展してきた。
使いやすさと美しさがイッタラの特徴だ。洗練されたデザインによる実用性と装飾性を両立させた製品は、日本でもファンが多く、デパートの食器売り場などでおなじみだ。
今回の展覧会は2021年、「イッタラ」創立140周年を記念して、フィンランド・デザイン・ミュージアムが開催した展覧会を再構成したもの。「イッタラ」の歩みを象徴する20世紀半ばのクラシックデザインのガラスを中心に、陶器や磁器、映像やインスタレーションを交えた約450点を通してその技術と哲学、デザインの美学に迫っている。
日本の美術館で、「イッタラ」に焦点を絞った展覧会が開かれるのは初めて。約1万2000点に及ぶ世界最大級のイッタラコレクションを誇るフィンランド・デザイン・ミュージアムと、「イッタラ」のアーカイブから貴重な作品を選りすぐって展示している。
欧州のシリコンバレー
フィンランドは森と湖の国、ムーミンの故郷として日本でも親しまれてきた。面積は日本とほぼ同じだが、人口は約550万人。一人当たりのGDPは世界13位。日本は27位。最近は、国連の幸福度ランキングで何度も1位になるなど、「住みやすさ」「暮らしやすさ」でも世界的に注目されている。
コロナ以前から在宅・リモートワークが広がっており、起業も盛ん。欧州のシリコンバレーと呼ばれるほど、イノベーションの気風にも富んでいる。3年前には34歳の女性首相が誕生した。
日本との関係は近年、深まっている。両国を結ぶ定期航空便は、10数年前は週に2便だったが、どんどん増えてコロナ直前には40便を超えていた。それだけ人やモノの往来が活発になっている。
小さな村のガラス工房からスタートし、世界的ブランドになった「イッタラ」。その歴史を通して、フィンランドの最近の元気さの秘密も探ることもできそうだ。
展覧会は11月10日まで。その後、島根、長崎、京都を巡回する予定。