ブラジルの飯 ミズグチケンジさんが説く「マズイ」からの逃避

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ハズレの落胆

   自称「釣りを伝える人、写真家」のミズグチさん。釣り雑誌などの編集者として18年のキャリアを積んで2011年に独立、執筆活動や写真撮影のほか、自身のアウトドアブランド「冒険用品」もプロデュースしている。

   「男の隠れ家」での連載は10月号から始まり、今回が二作目。初回もアマゾン川の最上流にあたるネグロ川(ブラジル・アマゾナス州)からの発信だったから、しばらくはブラジル紀行が続くのかもしれない。

   さて、世界43カ国を訪れたという「タビビト」から、個人の感想とはいえマズイと断言されてはブラジル料理も立つ瀬がない。名誉のためにあえて邪推すれば、ミズグチさんが使うのはもっぱら大衆食堂らしいので、一流店はそこそこの味なのではないか。

   確かに、旅先の食事が「ハズレ」だった時の落胆は大きい。グルメの本場、ヨーロッパが主戦場だった私も経験があるが、こちらは一期一会の覚悟でテーブルについているのに、前菜も主菜も副菜もいまひとつということがままある。とりわけ入国して最初の食事はその国の印象を決めかねない。ミズグチさんは、ブラジルの素敵さや魅力は別の機会に紹介すると断っているが、数日しか滞在しない観光旅行だとリカバリーは難しい。懲りた勢いで、マクドナルドやケンタッキーなどの「世界安心ブランド」に逃げてしまう。

   店がダメなら作るべし...サバイバル感あふれるこの結論、一般の旅行者にはいささかハードルが高い。どんなに不味い料理も醤油さえかければ日本人の口に合う、というものでもないだろう。街場のスーパーをのぞいても「逃避策」が見つからない場合、メシの不味さも土産話と達観しよう。永住するわけではないのだから。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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