人気ゲーム機「プレイステーション(PS)5」は、2022年9月に値上げした後も品薄が続いている。家電量販店の店頭では販売にあたり、抽選への参加や提携クレジットカードの持参など一定の条件をユーザーに求めている。
他方、ツイッター上では毎日のように「諦めてゲーミングPC買いました」との投稿を見かける。品薄のPS5の購入は断念し、ゲーミングパソコン(PC)を選んだ、というものだ。
PS5の「割り当て」少ない?
日本へのPS5への出荷量の「割り当て」数は、他国に比べて少ないことがたびたび指摘されている。
サブカルライターの河村鳴紘氏は2022年9月4日付「ヤフーニュース個人」の記事で、ゲーム業界団体「コンピュータエンターテインメント協会(CESA)」が発刊した「CESAゲーム白書2022」データを紹介した。
それによると、2021年におけるPS5の世界出荷数は1280万台。うち日本は約97万台で、日本の占める割合は7.6%だったという。対比して、任天堂の「ニンテンドースイッチ」の場合は世界出荷数が2367万台で、うち日本は約522万台。割合は22.1%だ。
この状況に、PS5の日本への割り当て数について、「『多い』と『少ない』の二択で問われると、『少ない』となるでしょう」と河村氏は評した。
興味深いデータ
PCゲーム配信プラットフォーム大手の「Steam」は、ユーザーの利用状況について調べた「Steamハードウェア&ソフトウェア 調査」を毎月公式サイトで公開している。
ゲーミングPCユーザーがPC用ゲームをプレーするには、パソコンに挿入できるディスクを買う、あるいはゲームをダウンロードして購入するなどいくつかの手段がある。
Steamはさまざまなメーカーのパソコン向けゲームを、専用アプリ上でダウンロード販売しているデジタルプラットフォーム。3月9日付発表によると、2021年の月間アクティブプレーヤー(利用頻度の高いユーザー)は世界で1億3200万人と、多くのユーザーを抱える。
上述の調査に、興味深いデータがある。ユーザーの利用言語のうち、各言語の割合の統計をとっているのだ。
デジタルアーカイブサービス「ウェイバックマシン」で、過去の各月の「Steamハードウェア&ソフトウェア 調査」を閲覧した。
2017年9月時点で、Steam内の日本語ユーザーの割合は0.81%。18年9月では1.12%。19年9月では1.29%。PS5の発売直前、20年9月は1.55%だ。0.2~0.3ポイントの幅で毎年伸長していた。
ところが21年9月時点では2.05%と、前年同月から0.5ポイント伸長。最新の22年9月の調査でも2.28%と、2%台をキープしている。
PC向けゲーム販売のSteamで日本語ユーザーの割合がこのようにアップしているのは、PS5を諦めてSteamを利用、PCでゲームをする人が増加したからではないか――。因果関係は確認されていないが、インターネット上にはこうした推測が出ている。
PCゲームやりやすい環境に
ゲーム業界に詳しい東洋証券のシニアアナリスト、安田秀樹氏に取材した。
安田氏がゲーム業界の動きを見ている限りでは、PS5を買えなかった結果ハイエンド(高性能)のPCに移動するユーザーが一定数いるのは「確かなようです」。同氏自身の周りで、実際にPS5の購入を諦めゲーミングPCを購入する例を目の当たりにしたとのことだ。
ただ、これはミクロな視点で把握している一部の例に過ぎず、全体的な割合でどの程度PCへの移動が起きているは不明瞭だとした。
Steamで日本語ユーザーが増えている要因は、ほかにもあるという。
以前Steamのゲームは、PS5版の発売後に一定期間遅れてからPC版が登場したり、他言語にしか対応していなかったりするソフトが多かった。
しかし、ここ数年はコンシューマー版と同時に発売する例や、最初から日本語に対応しているゲームが増えてきたと安田氏。日本人にとって、PCゲームをプレーしやすい環境になってきているようだ。