「屋根の上のヴァイオリン弾き」
『戦後ドイツに響くユダヤの歌――イディッシュ民謡復興』(青弓社)によると、中欧から東欧には多くのユダヤ人が散在した。「アシュケナジム」と称される。高名なピアニストのアシュケナージなどもユダヤ系だ。
大ヒットしたミュージカル、「屋根の上のヴァイオリン弾き」は、ウクライナの小さな「シュテートル」(ユダヤ人の町)に暮らす敬虔なユダヤ教徒の物語だ。のちにユダヤ人排斥の動きが強まり村を追われる。ジョーン・バエズの大ヒット曲「ドナドナ」は、1940年、ニューヨークのミュージカルで歌われたのが最初だとされる。作詞家も作曲家も、ユダヤ系の移民。原歌詞では、「屠場」に送られる小牛の姿にユダヤ人の姿が二重写しになるという。
ユダヤ人に対する集団的迫害や大量殺戮は、「ポグロム」と呼ばれている。ナチス・ドイツによる「ホロコースト」以前から、欧州各地や帝政ロシアで頻発した。1941年には、ポーランドやルーマニアで大規模な事件も起きている。