【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招いて、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。
未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?
第6回のゲストは、フリーランス声優の桐島ゆかさん。テーマは「実際『フリーランス声優』ってどう? 事務所辞めたら意外と...」だ。スペースアーカイブはこちらから。
「なりたい」理由ないなら、おすすめしない
桐島さんはかつて、事務所所属の声優だった。フリーランスになったのは、「事務所との契約更新ならず」だったため。その時、桐島さんには、(1)フリーランスになる、(2)別の事務所所属を目指す、(3)金を払って声優の勉強をし直す、の3つの選択肢があった。キャリアを鑑みて(2)は難しいと感じ、行く道に悩んでいたところ、「あるゲーム実況番組のアシスタントMC」の仕事が入った。
桐島さん「声優・桐島ゆかとしての仕事が、ある程度保証されたというか。生きていくための基盤ができたおかげで、(フリーランスとして)やっていっていいんだと思えるようになりましたね」
以来、「フリーランスとして『繋ぎ』で働いて、次に事務所所属を考えよう」と思いながら活動。歴6年ほどになるそうだ。ただ、桐島さん自身は「意外と、なんだかんだ続けてこられているけど、ぶっちゃけしんどい」そうで、フリーランスの道を視野に入れている人には、明確に「なりたい」理由がないならおすすめしないと話す。声優業界で言えば、事務所にいると「オーディションのチャンスが、より多い」メリットもある。
桐島さん「フリーランスだと、よほどのキャリアがあるか、名前の売れている人気声優でないと、なかなかオーディションが降りてこないです。事務所限定のワークショップもあるし」
山下さん「似ているところだと、私の場合は営業が難しい。飛び込みで企業訪問しても門前払いされるだろうし......あとフリーランスにとって最初の壁は、金額交渉だと思います」
桐島さん「フリーランスになりたての頃、仕事の依頼主に『このくらいの値段で』と請求した時、『安すぎるから、もうちょっと考えた方がいいよ』とアドバイスしてもらったことがあります」
山下さん「それは本当に良いクライアントですね......!」
声優の役割は、今や映画の吹き替えやアニメ・ゲームの登場キャラクターにボイスを当てるだけに留まらず、動画やイベント出演にも及ぶ。経験のない仕事に対し、適正な報酬を要求するのは難しい。桐島さんは「事務所にいる頃から、相場観を持ち、仕事をくれるクライアントと連絡を取れるようにしておくべきだった」と省みる。
フリーランスになってよかったことも、もちろんある。自分で全てのスケジュール管理をするため、「事務所から予定を決められ、先約をキャンセルせざるを得ない」状況にならなくなった。面白いと思える作品に出演できる機会が増えた。クライアントと直接やりとりするため、「今日のお芝居よかったです」「桐島さんにお願いしたい」と言ってもらえる――。
桐島さん「だから、フリーランスでいるのはしんどいけど、絶対に嫌なわけではないです。ただ、事務所に入ることも考えてはいます。やりたいことがやれる選択をしていきたい」
山下さん「会社や事務所に所属していても『会社じゃなく、あなたに頼みたいんだ』と言ってくれる人がいるなら、フリーランスになるチャンスやきっかけくらいに思ってもいいかもしれないですね」