台風15号は、静岡県に大きな被害をもたらした。静岡市清水区では、2022年9月24日から大規模な断水が続いている。26日時点で6万3000戸に及び、27日現在も解消していない。
市は清水区内で、給水車による応急給水などで対応している。加えて大手飲食チェーンも、被災住民に向けて飲食面の支援を始めた。回転ずしチェーン「くら寿司」は、独自の「給水車」を用意。牛丼チェーン「松屋」では、牛丼と茶の格安セットを販売中だ。
東日本大震災、熊本地震でも
静岡市の公式サイトによると、清水区内の一部エリアでは9月27日現在水道水が出始めているが、トイレなど最低限の使用にとどめ、飲用にはしないよう呼びかけている。住民は今も、飲料水の確保に苦労しているのだ。
この事態を受け、支援に乗り出した企業がある。そのひとつが、くら寿司だ。区内にある「清水二の丸店」で9月26日から、無料の給水支援を実施している。
同社広報によると、26日は朝9時から21時まで、27日も朝8時から提供している。世帯あたりの制限はない。28日も朝9時からスタート予定で、なくなり次第終了だという。
2011年の東日本大震災発生時、くら寿司は、当時の東北エリアを担当する現場責任者の判断で、店舗に在庫のあった食料を無料配布したという。この経験から以降は、有事の際の支援対応を視野に入れるようになった。2016年の熊本地震でも、炊き出しを実施した。
今回、9月25日には本社の社員が動き、給水用に使う車両の手配を済ませたという。
「慌てて作ったものですから...」
松屋は、清水区にある「清水南店」の営業を9月27日からキッチンカーで再開した。「牛めし 並盛」と「ブレンド茶 600ml」をセットにし、300円で販売している。通常、牛めし並盛は380円、ブレンド茶は120円で合わせて500円だが、同店では200円安く設定して提供している。
取材に応じた、静岡市内を担当するエリアマネージャーによると、断水した9月24日時点では「1〜2日で復旧するだろう」と考えていたそう。しかし断水は続き、予想以上の被害の大きさから、地域住民のためにとキッチンカーでの再開を決めたという。
ツイッターでは、「なぜ無料じゃないのか」という声も出ている。300円での提供を決めたのは、水だけが不足している状態であること、清水南店から車で15分程度の場所に別の店舗があり、また周辺飲食店との価格の兼ね合いがあるためだ。
松屋公式ツイッターが投稿したキッチンカーの写真には、右下に「水500ml ペットボトル付き」とある。しかし、実際にセットで販売しているのは「ブレンド茶」だ。これについて、「慌てて作ったものですから...」と明かした。作成時には水を提供する予定だったが、十分な数を用意できなかったため、松屋で販売している「ブレンド茶」へ変更したという。それでも、「飲み物が不足すると思ったので、何かしら提供したいと考えて」とお茶での対応を決めた。
29日までは継続する予定。店舗は、復旧状況や被災している従業員の生活を確認しながら再開するつもりとのことだ。