米アップルは、アプリ配信サービス「App Store」で取り扱うアプリやアプリ内課金の価格を引き上げる。ツイッターには、スマートフォン(スマホ)向けゲームの課金アイテムや、他のプラットフォームでの価格にも影響するのではないかと不安視する投稿が多い。
値上げは、2022年10月5日からの適用になる。専門家に、見通しを聞いた。
かつて「パズドラ」で価格引き上げ
公開された価格帯表によると、最低価格は120円から160円に変更される。以降の金額は250円が320円に、370円が480円に...といった具合に、2割以上の値上げだ。
この発表に悲鳴を上げたのが、中国発のRPGゲーム「原神」ユーザーだ。ツイッターでは、アプリ内課金アイテムの値上がり前の駆け込み購入を呼びかけるツイートや、早合点からか「原神値上げするって本当?」といった投稿も散見された。
過去、App Storeでの値上げに伴いアプリ内アイテムの金額引き上げを実施したゲームは複数ある。その一つが、2013年の「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)だ。アップルが「為替レートの変更」を理由にアプリ本体やアプリ内の課金コンテンツを値上げしたところ、パズドラを運営するガンホー・オンライン・エンターテイメントは、これを理由に事前告知なしに課金アイテムの価格を引き上げた(J-CASTニュース・同年10月18日付記事)。
今回の値上げで、「原神」の運営側がどう動くかは不明だ。ITジャーナリスト・石川温氏は取材に対し、ゲーム内課金は運営会社によって対応が異なるだろうと話した。例えば最低価格の引き上げについて、「10個120円」だったアイテムを「13個160円」と変更すれば、アイテム1個当たりの金額はほぼ変わらない。そのため、「最低価格は上がるが、最終的にユーザーに多く負担がかからないように調整するのではないか」と推測した。
「Google Play」での値上げの可能性
「原神」の課金ユーザーの中には、「App Store」値上げを機に、「アンドロイド」OS搭載のスマホに乗り換えようという人がツイッター上では多く見られた。これならApp Storeではなく、米グーグルが運営する「Google Play」という別のアプリ配信サービスを利用するので、値上げを避けられるのではないかとの期待らしい。
しかしツイッターでは、以前のApp Store値上げ時にGoogle Playでも同じ動きがあったと嘆く人が多い。
2019年10月1日の消費税率引き上げ時、App Storeは価格改定した。スマホ向けRPGゲーム「Fate/Grand Order」(FGO)はこのとき、App Store版アプリでの課金アイテムの価格を変更した。それに加えて、「配信先による価格差を抑えるため」に、Google Play版やauゲーム版についてもアイテム数と販売価格の改定を実施したのだ。
スマホ向けバトルロイヤルゲーム「PUBG MOBILE」はFGOの告知と同日に、日本公式ツイッターで、同様の理由で課金アイテムの価格変更と、Google Playでの販売価格調整を予告していた。
FGO、PUBG MOBILEいずれも、ゲーム運営会社側がApp Storeとの金額バランスを維持するため、「自発的」にGoogle Playでの値上げを実施したとみられる。ただ前出の石川氏によると、グーグルでも円安など為替レートに合わせて金額を調整することがあるそうだ。ということは、今回のケースではGoogle Play自体がApp Storeと同様の措置を取る可能性も――。
今後については、「なんとも言えない」と石川氏。ただ「グーグルとしてはアップルの動向を見て、iPhoneユーザーの取り込みを狙って(Google Playでのアプリや課金アイテムの)価格を維持することも可能」と指摘する。一方で、アプリ開発者としてはアップルだろうがグーグルだろうが、同じゲームを提供しているので同額の収入が欲しいだろう。Google PlayがApp Storeに「追従」する可能性も否定できない。