24時間テレビ 武田砂鉄さんが泣けない「感動量産」ノウハウ

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意外な展開を

   私はフィナーレで合唱される「サライ」は好きだが、この番組のどこかをしっかり観たことはたぶんない。武田さんが文字化してくれたので気が付いたが、心のどこかに「感動させるノウハウ」への警戒(その手には乗らないぞ)があったのかもしれない。作り手の計算通り感動するのも悔しいから、あえて距離を置いていた...可能性もあるのだ。

   武田さんは無論、番組を否定してはいない。むしろ45年分の蓄積と、それをベースに毎回繰り出される創意工夫の数々に感心している。

   「感動を量産するというのは大変な苦労があるのだろう。無味乾燥なビジネスホテルだって、あの心地よさを保つためにはたくさんの作業を必要とするはずなのだ」と。

   同時に「いつも通りにやれば、いつも通りに仕上がる。でも、感動ってそんな作り方でいいのか、と問うのを忘れたくはない」と、自戒を装いながらチクリとやる。

   ギネス級の長時間番組をビジネスホテルに重ねるのは酷かもしれない。感動量産のノウハウでわきを固めつつも、想定外の感動をもたらすことはできるはず。帝国やオークラは無理でも、シティホテル級のクオリティーは望めるかもしれないのだ。

   もともと1回限りのはずが、予想以上の募金額(約12億円)などから毎年開催になったとされるイベント。計算できないハプニングやサプライズが1/24でも戻ってくれば、「いい大人」もかじりつくのではないか。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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