フィジカルコーチの出番
――最後に、再来月のカタールW杯までに選手たちに出来る準備はありますか。
池田:とにかく試合に出ることです。カタールW杯で、運動量とクオリティーを落とさないためには、所属クラブで90分間、タフに感じられる試合に出て、活躍する。これにより、強豪国とも戦えるゲーム体力がつきます。トレーニングだけでは無理です。
欧州リーグを終えてからカタールW杯までの時間がなさすぎて、日本代表スタッフは頭抱えているのではないでしょうか。ただ、個人的には、そういった状況こそ、フィジカルコーチの出番だとも思います。
私は、W杯での日本代表に期待しています。今回のチームは、数年前とは違って、トータルスコアよりも、それぞれの武器を持った選手が多い。日本人の強みである組織力を出しやすいし、そのベースとなる一体感は森保監督の得意な部分だと思います。日本人監督が日本人を指揮する時の選手のリアクションは、全幅の信頼を寄せるか、寄せないかのどちらかに大きく振れます。僕が聞く限り、いまの日本代表は強い一体感があるそうです。それは選出基準の一つにあるのかもしれません。
世間はあまり期待していないかもしれませんが、そういった時の日本代表は強いですからね。一体感を持って「一泡吹かすぞ」というパワーにもなりますから。
池田誠剛(いけだ・せいごう)
1960年12月16日生まれ。94年の米国W杯優勝チーム・ブラジル代表に帯同。95年にはバロンドール選手であるジョージ・ウェアが在籍していた、黄金期のACミランで研修を行った。南米と欧州のトップチームでフィジカルコーチの経験を積む。
舞台をJリーグに移すと、2000年代には、岡田武史氏と共に横浜F・マリノスの黄金期を作り上げる。岡田氏とは、その後も中国の浙江緑城(当時は杭州緑城)でコンビを組んだ。
選手からの信頼も厚い。かつてJリーガーで、2009年に韓国ユース代表監督に就任した洪明甫氏から、フィジカルコーチを要請される。11年からは、韓国五輪代表史上初の日本人フィジカルコーチとなった。
2018年からは、サンフレッチェ広島で青山敏弘選手やベテランを再び輝かせ、荒木隼人選手を日本代表にまで育てた。22年からは再び洪監督のもとで、韓国Kリーグ・蔚山現代FCのフィジカルコーチを務めている。