サッカー日本代表を名フィジカルコーチが分析 W杯までに出来る準備あり

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「ロストフの14秒」を生んだ「意識」

池田誠剛氏
池田誠剛氏(写真提供:蔚山現代FC)

――ブラジル代表などが最たる例ですね。そのコンディションですが、欧州組の日本への長距離移動は影響するのでしょうか。たとえば、日本代表のアジアでの活動期間が3日あったとします。3日間フルに戦術練習できるのですか。

池田:フライト時間はコンディションに大きく影響します。さらに、トランジットの時間も疲労を大きくします。「横の移動」は、最小限にしなければいけません。
   よく「欧州チャンピオンズリーグで、選手は毎週移動している」との指摘があります。けれど、欧州内は90分もあれば移動できます(編注:FIFPROによると、欧州所属チームと母国を往復する距離について、韓国代表選手はイングランド代表選手の2.5倍)。アジアの場合、3日の活動期間があっても、欧州組はリーグ戦の疲労、移動のタイムラグを取り除く時間にほとんどを費やし、戦術練習の徹底は座学程度に終わってしまいます。
   ドイツやスペイン代表は、スタメンに自国のビッグクラブの選手が多く、選手同士に戦術の共通理解があるから、代表のトレーニングで一から戦術練習する必要がありません。だから、強い。ただ私は、ドイツやスペインのように日本代表もなれると思っています。

――Jリーグを、欧州トップレベルまで高められるということでしょうか。

池田:はい。Jリーグを秋春制にすれば、リーグのインテンシティー(強さ、激しさ)は確実に上がり、欧州トップリーグのようなレベルに持っていけます。現在は、夏は気温30度、湿度80%のなかで試合をやらないといけません。これでは選手は走れませんよ。
   前回のロシアW杯で、日本はラウンド16でベルギーに敗れました。真夏にサッカーを続けてきた日本人は、暑さでへとへとで「残り数分」という感覚が染み付き、試合終盤がスローテンポになってしまう。でも真夏にサッカーをやらない欧米は違う。試合終了のホイッスルが鳴るまで変わらない動きをし、「あと数分もある」という感覚でリーグ戦を戦っている。その差が「ロストフの14秒」につながったのではないでしょうか。

石井紘人(いしい・はやと)
ラジオやテレビでスポーツ解説を行う。主に運動生理学の批評を専門とする。著書に『足指をまげるだけで腰痛は治る』(ぴあ)『足ゆび力』(ガイドワークス)など。『TokyoNHK2020』サイトでも一年間に渡り、パラリンピックスポーツの取材を行い、「将棋をスポーツ化した競技『ボッチャ』」などを寄稿。 株式会社ダブルインフィニティ代表取締役でもあり、JFA協力、Jリーグと制作したDVD『審判』、日本サッカー名シーン&ゴール集『Jリーグメモリーズ&アーカイブス』の版元。現在『レフェリー』の販売中。

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