【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招いて、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。
未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?
第5回のゲストは、フリーランス声優・ナレーターのすずきももこさん。テーマは「そんな『声優へのルート』あり!? 夢に回り道はない」だ。スペースアーカイブはこちらから。
一度は夢を諦めて
何かを読んだり、声に出して表現したりするのが好きで、小学5年生の頃に「声優」の仕事を意識し始めた、すずきさん。夢に向かって踏み出した先は、声優の養成所や専門学校ではなく、演劇の短大だった。活躍しているベテラン声優たちの背中を見て、こう考えたがゆえだ。
すずきさん「もともと舞台で芝居をしていた人が、声の仕事をやるようになったり、劇団をやっていたりするように、やっぱりベースは『お芝居の部分』だよなって」
声優になるため、すずきさんは短大で「俳優としての下地」を築こうとした。そこで、日本舞踊やジャズダンスなどの身体表現や、国内外の演劇史を学んだはず......なのだが、それらの記憶がかすむほど打ち込んだのは、「舞台監督」の仕事だった。
すずきさん「生徒会が表のことを回す人たちだとしたら、私の母校における舞台監督は裏を回す『裏生徒会』みたいな存在でした。裏のリーダーというか」
あくまで当時のすずきさんの体験談だが、舞台監督になった短大生たちの朝は早く、夜は遅かった。自身の勉学や稽古とは別に、公演の準備や会議に追われていたためだ。栄養ドリンクが欠かせない毎日で、生きるのに必死だった。
すずきさん「うまく両立させている人もたくさんいましたが、私は不器用で、上京して初めての一人暮らしだったこともあり、舞台監督と勉学の両立が難しく......今振り返ってみると私、演技の勉強したっけ?みたいな(笑)」
山下さん「なるほど......短大を卒業した後にそのまま声優になったんですか?」
そうです、と答えないすずきさん。家庭の事情で、一度は夢を諦めたそう。就職活動をして一度は内定を獲得したものの、紆余曲折あって入社はせず、地方の実家へ帰った。再び、行く道が「声優」につながったきっかけは、契約社員としてリポーターになったことだった。未経験で飛び込み、多くの人にインタビューをして回る日々だったという。
すずきさん「リポーター1年間やったら、自分が声を使って表現するとか、そういう原点にちょっと立ち返って、またその声優の夢チャレンジしてみようかなと思いまして」
結果、第9回声優アワード新人発掘オーディションを受け、合格。声優事務所所属が決まった。