液状化で下水道壊滅
2011年の東日本大震災では、地震や津波のほか、液状化による被害も深刻だった。大きなダメージを受けたのが、千葉県浦安市だ。フォーラムで、当時の市長だった松崎秀樹氏がプレゼンテーションをした。
東日本大震災で、液状化による家屋被害は1都8県に及んだが、千葉県、中でも浦安市が全体の3分の1を占めた。同市は海面埋め立てでできた土地が市全体の約4分の3に上る。だが松崎氏は、「液状化は決して埋め立て地だけの現象ではない」と強調した。県内では、我孫子市のように内陸の地域でも液状化が発生していた。
液状化により、地中の下水道は壊滅的な損害を受けた。それは「トイレ問題」に直結する。震災後、浦安市では、上水道の復旧が発災27日後だったのに対して下水道は36日後だった。「下水道が復旧しないとトイレは使えない」と、松崎氏は指摘する。
一方で、建物と共にトイレそのものは無事だった住居もあった。水は流せないので、市側で用便の際に使える凝固剤を36万袋、市民に配布。便器の中にゴミ袋を被せた簡易トイレをつくり、排便後に凝固剤で固め「燃やせるゴミ」として出せるよう便宜を図った。
緊急時にはこうした対策は必要だが、衛生的にも、また心理的にも長期間は難しいだろう。その後、市では仮設トイレを準備したが、不慣れから設置作業に戸惑ったり、場所が適切でなく利用が進まなかったりなど困難を伴ったという。
松崎氏は、「排せつ問題は人間の尊厳にかかわる」と言う。日常誰もが行う行為であり、体調につながる。「様々なケースをきめ細かくシミュレーションしなければならないのが、トイレ問題」だと、締めくくった。
(J-CASTトレンド 荻 仁)