台風、豪雨、そして地震 災害で「トイレに行けなくなる問題」を考える

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首都直下地震はトイレにどう影響

   東京都は2022年5月、首都直下地震の被害想定を10年ぶりに見直した。この間、社会環境も変化している。これらにより顕在化した課題を、都総務局防災計画担当部長・芝崎晴彦氏が発表した。

   「都心南部直下地震」の想定は、マグニチュード7.3で、建物被害は19万4431棟、死者6148人、負傷者9万3435人、帰宅困難者453万人に見直された。いずれも10年前の数字より少なくなっている。住宅の耐震性の向上、テレワークの進展やインターネットショッピングの普及による外出機会減少をはじめ複数の要因が影響している。職場の近くに住む人の増加で、帰宅困難者数は減少するという。とは言え、被害が甚大なのは変わらない。

   新たな被害想定に基づく、ライフラインの復旧見通しはどうか。電力は約4日後、水道は約17日後、ガスは約6週間後だ。だが芝崎氏は、「この日数で必ず復旧するとはいかない」と指摘する。例えば電力の場合、「約4日後」には次のような説明が続く。「配電設備被害の復旧のみ評価。拠点的な施設・機能(発電所、変電所及び基幹送電網等)の被災は、定量評価結果には含まれていない」。例えば地震ではないが、2019年9月の台風15号では、千葉県で送電に必要な鉄塔や電柱が数多く倒壊して停電が長期化。完全復旧まで19日間を要した。

   想定見直しにより、都では定量評価だけでなく、「ライフラインや交通インフラなど約50項目について、発災後の時間軸に応じた被害シナリオを定性的に評価」した。そこには、トイレに関する評価も含まれた。一部を例示しよう。

「停電・断水した地域では、自宅の建物に被害がなくても、水やトイレの使用が困難となり、周辺の公園や避難所等に仮設トイレが設置されるまで、被災者自身が携帯トイレなどで対応することを求められる」
「上下水道の機能支障や、停電等による各世帯・建物のトイレ機能の停止により、仮設トイレの需要が増大するが、早期の設営は困難となる」
「周辺の下水管路に被害がなくても、オフィスビルやマンションなどの集合住宅では、建物の所有者や管理会社による排水管等の修理が終了していない場合、水道の供給が再開されていてもトイレが利用できない」
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