栄養成分を損なわずに野菜を有効活用
早田氏が野菜シートと出会った当時は、1週間程度で変色するため、アルミ包材を使用しなければならなかった。また、紙を食べているような食感で、2002年に10万パックを売り上げるもリピート購買がなかったという。
2004年、原価を安くする目的で中国に工場を建設した直後に海苔業者が倒産。早田氏は製造技術もノウハウも無いまま引き継いだ。長崎県内の短期大学と共同研究を実施し、食感の改良に成功。事業化が見え、2006年に「アイル」を設立した。
その後、数回の資金調達に成功するのと合わせて、設備を拡充し新工場で量産体制を確立。ベジート自体も、海外の展示会に出品して「環境に配慮した商品」と高い評価を受けた。2018年には、イトーヨーカドー全店での販売を開始。22年2月にはくら寿司や、「デパ地下」で総菜を販売する「RF1」の恵方巻きに採用され、4月からはダイソーでの取扱いが始まるなど広がりを見せている。年内にはインドネシアに工場を建設予定で、いずれは海外での販売が7割を超えるような計画を立てているという。
「ベジート」の原材料は野菜と寒天のみで、保存料や着色料は加えていない。賞味期限は常温で最長5年。栄養成分や食物繊維を損なわずに、体積と重量をそれぞれ10分の1以下にできる。しかも、物流コストを安く抑えられる。
早田氏によると、野菜の種類によるが、生産される野菜全体の30%程度が規格外となっているという。2050年には世界の人口が100億人になり、食糧危機が具体的な問題になると言われている。規格外の野菜が「ベジート」として、将来世界の栄養源になりうる可能性がある。
(ライター・永井 玲子)