お先にどうぞ 下野康史さんが重視する運転者と歩行者の譲り合い

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運転者の見せ場

   救急車や消防車、パトカーなどの「優先通行」は、道路交通法(40条)が〈一般車両は緊急自動車の進行を妨げないよう進路を譲らなければならない〉と定めている。教習所で学ぶ以前の常識だ。他方、横断歩道での歩行者優先は同じ道交法(38条)にあるのに「軽く」扱われ、いまだに無頓着なドライバーが少なくない。

   実際は、運転者には横断歩道手前での減速義務や停止義務がある。歩行者や自転車が横断しようとしているときは、一時停止して道を譲らなければならない。

   ただし、足立区での「誤摘発」で警察とやりとりした弁護士によると、警視庁の担当者は「歩行者から譲られて通行した場合、切符は切らないよう指導している」と明言した。当たり前だ。譲られてもダメなら、それこそ幇助罪で「両成敗」とするしかなくなる。

   「ええかっこしい」の私にとって、運転中に緊急車両が近づいて来たり、横断待ちの歩行者がいたりする状況はちょっとした見せ場である。後者については前々から意識し、止まるのはもちろん、目前を横切る人と笑顔でアイコンタクトするのが流儀だ。

   ところが歩行者としての私は、つい権利意識が先に立つようで、横断歩道を減速もせず通過するクルマを睨みつけてしまうのである。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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