【連載】アイスリボン・藤本つかさ 素顔の女子プロレス
そろそろ夏の終わりを感じ、「少年時代」が聴きたくなる今日この頃。最近はもっぱら甲子園にはまってました。
高校生が土まみれになりながら、一勝をかけて戦う。負けたらそこで甲子園が終わる。とても青春を感じました。やっぱりいいよね、青春って。
優勝した私の地元・宮城県の仙台育英高校。東北に初めて優勝をプレゼントしてくれました。そして須江航監督の試合後インタビューに感動。
「青春ってすごく密」
「全ての高校生の努力のたまものが、ただただ最後、僕たちがここに立ったというだけなので、ぜひ全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います」
高校野球に関わる全ての人たちが救われた言葉だと思います。
そうなんです。一生懸命やってる人が好き。頑張ってる人が好き。
プロレスも同じ。感情爆発して全てをさらけ出してる人が好き。
やっぱりプロレスは青春だ!
本日はプロレスにおけるマイクパフォーマンスについてお話しします。
東日本大震災の後「生きててくれてありがとう」
プロレス界においても語り継がれている言葉があります。例えば、
中邑真輔選手「一番スゲーのはプロレスなんだよ」
橋本真也さん「時はきた。それだけだ」
が、そう。
皆さんは、心に響いたマイクパフォーマンスはありますか?
私自身、新人の頃は噛んだり日本語が変だったり、落ち着きのなさが目立っていて、マイクが苦手でした。マイクができなければ、真のメインイベンターにはなれないと言われていたので、自分の映像を見返して必死に研究しました。
その中で、何を言うか事前に決めるより、その時の感情を表現するのが大事だと分かったのです。きっかけは2011年3月20日、東日本大震災後の初の東京・後楽園大会。
ファンの皆さんに「忘れられない」と、よく言って頂きます。試合後、
「ここにいる皆さん、生きててくれてありがとう」
とマイク。宮城県出身の私が、あのとき未曾有の出来事を経験したからこそ絞り出せた言葉だと思います。
感情移入できるレスラーが一番
「これはうまい!」と感心した「切り返し」パフォーマンスがあります。後輩と試合をしたあとに健闘を称えようと思い、握手を求めました。すると、握手と見せかけてチョキのポーズをされ、じゃんけんで負けた絵面になったことです。
言葉がないのに、試合に勝って勝負に負けたような感覚になりました。
このように試合後にマイクパフォーマンスがあるので、プロレスファンはスリーカウントを聞いて試合が終わっても、すぐ席を立つ人は少ないのです。「勝って何を言うのだろう」が、試合と同じくらい重要。
試合後はテンションが上がっているので、その場の感情をうまく言語化できることが大切。言葉で人の心を動かすことができる人は、発信力に長けています。
ただし、マイクを投げるのはNG。マイクは1本8万円くらいしますからね!
人々は試合を通して、リング上と自分の人生を投影する。例えば仕事でミスをして落ち込んでいた時に、リングでやられてもやられても立ち上がる姿の選手に、今の自分の気持ちを乗せたりします。
寿休業している今、感情移入できるレスラーが一番だなと思います。
空気が一気に変わった言葉
先日、私のタッグパートナーの中島安里紗が所属している団体「シードリング」7周年大会で、こんなことがありました。
メインイベントは中島安里紗vs松本浩代。どちらも今を代表するトップ女子プロレスラーです。
しかし安里紗が場外に投げられた瞬間、膝と肩を強打してしまい、そのままレフェリーストップになりました。注目されていた試合だっただけに、騒然となる場内。でも勝者は大会を締めなければいけません。
その時のマイクに感動しました。しばらく動けなかった浩代さんでしたが、
「中島の代わりに私がシードリングを引っ張っていきます」
そのまま退場した浩代さんには、大きな拍手が送られました。
その後、代表の南月たいようさんがマイクを持ったのですが、声のトーンから素晴らしかった。
「中島も松本も、ここで終わるような女じゃないです。応援してほしいです」
悲観していた空気が一気に変わりました。そこからFUNKISTさんのライブが始まり、参戦した選手が輪になって盛り上がりフィナーレ!
空気を変えた南月さんのマイクから、FUNKISTさんの歌。
担架を持ってくるスピードや、動けない浩代さんに寄り添う仲間達。
安里紗と浩代さんの物語は続くに決まっているし、最後のお客さんの拍手がこれからも応援するという証だった。
自分がその場にいないのが悔しくなるくらい、とても素敵な7周年大会でした。
紛れもなく、私の好きな女子プロレスがそこにあった。
改めて7周年おめでとうございます!
結婚式をしました
実は身内だけで結婚式をしました! このコラムが出る頃には既に終えていますが、39年経ち、やっと父親にバージンロードを歩かせることができました。
結婚式の最後に新婦から両親の手紙があるじゃないですか。この原稿の締め切り前も、手紙を書いては消して、書いては消して、を繰り返しています。
果たして藤本つかさは無事、読めたのでしょうか?
やはり試合後のマイクパフォーマンスとは違いますね。リング上だったらその時の感情を叫べるのだけど...。両親のお手紙も、コスチューム姿で試合後のアドレナリン分泌してるときに読みたいなぁ。
次の大会は8月28日、両国KFC大会です。女子プロレス見にきて!
宮城県利府町出身。利府町観光大使。
東北福祉大学卒業後、広告代理店に就職。上京後、芸能事務所にスカウトされる。プロレスを題材とした映画「スリーカウント」出演のため、2008年プロレス団体アイスリボンの練習に参加したところからプロレスラー人生が始まる。
2015年アイスリボン取締役選手代表就任。18年には東京スポーツ新聞社制定女子プロレス大賞受賞。21年8月23日デビュー13周年を迎える。
【アイスリボン公式YouTube】
https://youtube.com/user/iceribbon
【藤本つかさ公式YouTube】
https://youtube.com/channel/UC_V0vfhOMxE9bCVvxjJ9JBw